espliaのちょっとだけ時代遅れ。

生むは雑感、生きるは過去、ちょっと遅れた感想中心ブログ。

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幕末魔法士、雑感


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私は今日みたいな夏晴れの日に生まれたんだ。

だから――






電撃文庫刊行、田名部宗司著『幕末魔法士-Mage Revolution-』についての雑感を今回は綴っていきます。

あらすじ

明治維新が始まろうとする幕末の日本。
大坂適塾で学ぶ優れた蘭学者、魔法士「久世伊織」は、塾長の命でとある魔道書を翻訳するため、出雲は松江へと赴くことになるのだが・・・・・・。



読み終わった感想は「物語の見せ方がうまい一方、踏むべき手順を踏んでいないが故に物足りない印象が残った作品」といったところでしょうか。



本編最大の魅力は、主人公兼ヒロイン(?)「久世伊織(くぜいおり)」の生い立ちにまつわる謎と、ヒロイン(?)兼主人公「失本冬馬(しもととうま)」の出生の謎。この二点を上手く使った性別偽装についての解答や、物語の動かし方にあったように感じられました。

イラストを含め、最序盤から「久世伊織」が女であるという認識を読み手に植え付けながら、「どうして女性であることがバレないのか」という根本的な疑問に対するネタを仕込んでいるのはなかなかに斬新な見せかたであるように思います。


ただ「伊織が実は男ではなかった」という最重要部分でのインパクトが薄く、中盤までの問答がやや薄ら寒いものになってしまっていること。

また最初から「伊織」の姿を見通しているはずの「冬馬」が、男だと信じきっていた根拠の薄弱が気にかかる点はやはり「男装女子」ジャンルとしては弱く、シナリオ上の面白みはあっても、驚嘆を引き出せるレベルではありません


「伊織」と「冬馬」の主観を使い分けた物語の構成ながらも、やはり女性主人公ということもあって感情移入がしにくく。主人公でありながら上の問題(性別)故、内情があまり語られないこともあり、読み手が主人公になりきって楽しむことが著しく不可能。


私的には、ここはいっそ男性であり、本編では「伊織」よりも内面描写のある「冬馬」を主人公に設定。イラストや文章でも「伊織」の性別をひた隠しに、最後の最後でネタばらしするのが王道かつ常道ではないかと愚考するところ。これぞいわゆるギャップ萌え


まぁ私の考えだと、表紙が男(に見える)キャラのみになり、ジャンル超えそうな危なっかしさを演出してしまう可能性が高くなりますが・・・・・・。



世界観に関して気になることも多く。

幕末魔法士という存在についての根本的な疑問はさておき、登場する全員が全員「西洋の言語を用いた魔法士」であるというのが個人的には残念でありました。

日本の魔道といえば、深い知識はなくとも「陰陽道」。 

それをそっちのけにして、なんだかよくわからないラテン語?を多用して展開されるバトルは、幕末という時代背景にあってなかなか奇異なものが感じられますね。

よしんば、外海の魔術にスポットを当てるにしても、味方も敵も、やられ役も全員西洋かぶれというのもバリエーションに乏しい印象を拭えません。

呪文の語感。また今後続刊を売り出すに当たって、「西洋VS東洋」の図式がやりたいがための出し惜しみなのという考えかたも間違いとは言いませんが、せめて「伊織」だけは和の装いを貫いて欲しかったというのが本音です。


人によって感じ方は違うと思いますが、呪文1つでどんな不思議現象も思うが侭、みたいな棒立ち図式で行使される魔術の面白みのなさ

また魔術を使う上での致命的なリスクや弱点への記述が薄いことによる展開の薄っぺらさが加わり、いかにも詩的で、「カッコよさげな」単語を羅列されたとしても、余計に想像力が働かなくなるだけで終わってしまいます。


後半になればなるほど、この微妙な詠唱が連続で続くため、その過剰装飾っぷりに辟易してしまうことも。せめて「印」を結ぶなり、魔術にのみ依存しない戦術を編み出して欲しかったですね。

オリジナルが輝くのはやはり綿密な設定があってこそだと思いました。



上記の戦闘描写の難に加え、今作の敵役が(隠されてはいても)あからさまな人物であった他、迫力もなく、どこか思想も中途半端であったため、死闘というほどに焦りや憤り、緊迫感を得られなかったのは大きな痛手でしょう。

大逆転の一手が「戦略」ではなく「性能差」や「血筋」に強く依存していることも含め、消化試合、というと語弊がありますが、もう少しそれなりの演出の強化が欲しいところでありました。

主人公両名の生い立ちや性別が終盤まで隠される。それはつまり、人間性をウリにするには物足りない舞台なわけですから、それ以外の演出が物足りないのは作風として致命的であると言えるでしょう。


見せかたはとても面白い。しかし言ってしまえば終盤まで読んで、初めて1つ感動できる、というレベルでしかない。そんな風に感じました。


文章そのものは読みやすいですし、インパクトは薄くとも起承転結もしっかりしているので駄作とは間違っても評せませんが、王道に行くならば王道へ、奇抜にするならもっと奇抜に。メリハリをつけてハッチャけたほうが面白い作品になったかもしれませんね。




気になった方は上記に留意しつつ、購入を視野に入れていただければ幸いです。















読了お疲れ様でした。
*

【Xbox360】無双OROCHI2、雑感




コーエーテクモゲームス発売『無双OROCHI2』についての雑感を今回は綴っていきます。


あらすじ

本作で描かれるのは、前作『無双OROCHI』のその後の世界である
三國・戦国の英傑達の活躍により平和を取り戻したかに思われた異世界に、新たな脅威が迫ろうとしていた。

次々と討ち死にしていく仲間。各地を蹂躙する妖蛇の進撃。
かろうじて生き残った武将たちは、最後の特攻作戦を決意するのだが・・・・・・。


【Good point】

1、次世代機の中でも高次元の描写力とワラワラ感。

今回は敵兵の種類も豊富で、あっという間に1000人斬りできるワラワラ感が素晴らしいですね。

シナリオ上は殺伐した戦場ながらも、それを彩る背景が「お祭りゲー」ならではのファンタジックさを併せ持っているので、順来の爽快感を継承しつつ新鮮味のある舞台に。

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2、キャラの住み分け。

戦国、三国、歴代ORCHI登場のオリジナル、計120人以上人物が存在しながらアクションの住み分けが出来ている点はやはり大きいですね。

膨大なナンバリングで増えたキャラクターをいわゆる「リストラ」せずに用意してくれるのは、無双作品においては当然という風潮ではありますが、ここまで来れば立派なものでしょう。
製作者側の作品に賭ける意欲が感じられます。


自分の使うキャラクターによって会話が変化するなど、今作の要たる「ストーリーモード」において薄いながらも武将らの大半が作品の中核に関わってくるため、戦国三国問わず、無双ファンならば広く楽しめるであろう工夫が見られるのも素晴らしいところ。

難易度「修羅」となると、さすがに常識外れの難しさとなりますが、大半の実績、アイテムを獲得する分にはさほど難易度が高くないのも大きく間口を広げる一因だと言えるでしょう。

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【Bad point】

1、膨大なキャラクターに難。

上に挙げたように、キャラクターの作りそのものは細やかです。が、やはり数が多いせいで一人一人の個性の薄さは否定できません

しかし決意を固めて「リストラ」しようにも、一度出してしまった以上ファンのためには減らす選択肢を選び難いもので、ハードが高性能になるたび、ナンバリングを重ねるたび、どんどん個性が薄まっていくという悪循環に陥っている印象がありました。


多くをカバーしているとはいえ、ほぼ出番のないキャラクターも複数存在し、頑張って全キャラクターを噛ませようと頑張った果てが、同じ戦場での抱き合わせという方向性になってしまい、仲間になった感慨というものを薄くしてしまうことに。

猛将であろうと終盤に仲間になろうと、使用時には必ず「Lv.1」のままですし、モーションの差別化はうまく出来ていても「このキャラを使おう」という動機には一歩踏み込めていない感覚を拭えません。

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2、『ストーリーモード』の演出に難。

時を渡り、悪しき過去を変える」というコンセプトは、個人的趣向を度外視してもうまく考えられているなと感じました。

・・・・・・が、肝心の演出がどうもぱっとしない

例えば、「あの時見殺してしまった仲間を救出する」目的があって、さぁ過去に来た! しかしどうしても助けられない仲間というのが一部いるわけですよ。

問題は、それが「扉が閉じられていて事実上救出が不可能」だったり、「助けに近づくと戦況に関わらず敗走」だったり、果ては「洗脳されている!」という荒唐無稽なものだったりで、「助けられない」というより「死なされている感」が強いです。

頑張って戦ったけどどうしても手が届かなかった。そういった「悲壮感」が全く感じられません。

無双の仕様上、死に際に血飛沫が上がるわけでもなく、無残に朽ち果てた死体があるわけでもなく、前提条件として過去に戻れることもあってやっぱり緊張感もなく。ストーリーモードで表現したかったであろう抗う姿が実感できないことが、何よりも大きな損失でしょう。

戦略を練れば助けられる。逆に戦略なしに突っ込んでも助けられない。

そういったプレイングの問題を前提とした救出劇であったならば、ただストーリーをダラダラ追うのではない、プレイヤー自身が参戦している気分をもっと味わえたのではないでしょうか。


もちろんレアアイテムを使ってしまえば、戦略も糞もなくなってしまうわけですが、取得条件を「ストーリーモードクリア後」に設定すれば済む話で、その点では問題になりません。

戦場を舞台に悲哀を押すなら、対象年齢を跳ね上げてでもするべき演出があったはずです。

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上の2項目に加え、

1、ストーリーモードを進めて行くことに開発できるようになる『無双の戦場モード』が、バグ無しにはまともに改変さえできない仕様。(武将を副数名変えるのが関の山)

2、繰り返しプレイするたび、各戦場で短くないロードを挟んでのイベントが何度も起こる

などが単純な掻痒感としてプレイヤーの士気をみるみる下げる要因になっていました。


コンセプトやキャラクターの住み分けばかりに拘って、肝心な演出やプレイングに際する粗があまりにも露呈しすぎている、と言えるでしょう。

個人的には、無双系ゲームとして硬派だった『無双シリーズ』が最早『戦国BASARA』もかくやといったハッチャけぶりにやや辟易


【個人的な戯言】

一応私のプレイ深度は、複数キャラクターをLv.99にし、

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全ステージを難易度『修羅』で攻略した程度です。

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お気に入りのキャラは『ガラシャ』(なのじゃ!)

そこに、操作のしやすさから『王異』と『かぐや』加えて『修羅』の攻略を進めました。が、キャラの性能というより武器に添付する属性さえ揃えば攻略は自体は楽な印象。

唯一恐ろしかったのは、ハードの処理能力によって表示されない兵士で、中でも弓兵の凶悪な狙撃はHPフル状態から一気に死に到ることも・・・・・・。

戦国武将勢のノーモーション乱舞が怖いので地面に下ろさず倒しきる「お手玉」技術も必須でしょうか。



【総括】

無双シリーズを知っている人も、知らない人も楽しめる作品ではあります。

しかし万人向けを目指した結果、演出面や個々の武将の個性が薄れ、プレイするほどに底の浅さが露呈する「長続きしない作品」であることを念頭においたほうが良いでしょう。






気になった方は上記に留意しつつ、購入を検討していただければ幸いです。





















読了お疲れ様でした。 *

神さまのいない日曜日、雑感








あなたを一人にはしません。

それは墓守の役目ですから。






富士見ファンタジア文庫刊行、入江君人著『神さまのいない日曜日』についての雑感を今回は綴っていきます。

espliaのあらすじ

15年前に、この世界は神に見捨てられた。なぜか人は生まれず、死者が死ぬこともない。

そんな世界でも「アイ」は、今日も愛用のショベルで墓を掘る。
彼女は死者を「死者として」埋葬できる『墓守』と呼ばれる存在であった。


読み終わった感想は「リアルとファンタジーがぐちゃぐちゃに交じり合った不可思議な雰囲気に良くも悪くも魅せられる作品」といったところでしょうか。



富士見ファンタジア文庫「大賞」受賞ということで、さすがというべきか、退廃的な世界観の演出は素晴らしく。人が死ねなくなった世界の荒廃ぶりとそんな世界に遣わされた『墓守』と呼ばれる異質な存在への言及、またそれら世界観をうまく用いた伏線も上手く用意されていました。15年前から子供が生まれないのに「12歳のアイ」が存在するという矛盾がその最たるものでしょうか。


全体を見通せば小難しい設定ばかりが目立ちますが、終盤に至ってのオチのつけかたは実にファンタジック――よく言えば「童話的」で、キャラクター達の動向に明確な理由を用いないが故の、想像する楽しみが生まれているように感じられます。


しかし物語の随所に、国や社会、学校や腐敗などの現実的ワードを用いて説得力のある設定を散らしながら、終盤の展開や『墓守』などに対する作中でもっとも重要な部分への説明が、「神さま」や「運命」といった非現実的なワードであっさり片付けられてしまい、どこかチグハグとして印象があるのも事実であります。


張られた伏線には悲しいくらいに筋道が通るのに、最後の最後にだけ「理屈なんていらない!」とばかりに『奇跡』を用意されても、切り替えが追いつかない人にはなんともいえない読後感になってしまうでしょう。この辺りの塩梅は非常にもったいない。


童話のように物語を終わらせたいなら、小難しい世界観は控えるべきである、とまでは言いませんが、もう少し現実的描写と幻想的描写の境をなだらかにしたほうがすんなりと読み終えられるのかもしれません。


ただ童話的な話の締め方を指し、ずばり「悪い」とは一概に言えないであろう、と思うのが私自身の考えで、例えば重要人物の一人である「人食い玩具(ハンプニー・ハンバート)」が『マザーグース』の「ハンプティ・ダンプティ」を捩(もじ)っていると考えられることが、その理由の1つとして挙げられます。

諸説や解釈、なぞなぞの答えにいたる経緯はこの際省きますが、『不思議の国のアリス』にも登場する彼のハンプティ・ダンプティは、「いったん壊れてしまえば王でさえ元に戻すことができない」という解釈から『卵』の姿で描かれることを知っている人は多いでしょう。

筆者がその点に影響を受けているかは字面で判断しようもありませんが、「死んでも(壊れても)生き返る」という「人喰い玩具」の性質と、上記の「壊れれば誰も直せない」ハンプティ・ダンプティの性質は、神さまのいない世界、だからこそ成立してしまった皮肉として用意されているとも考えられそうです。

また『マザーグース』の詩に「月曜日生まれのこども」というものがあり、


 うつくしいのは げつようびのこども
 ひんのいいのは かようびのこども
 べそをかくのは すいようびのこども
 たびにでるのは もくようびのこども
 ほれっぽいのは きんようびのこども
 くろうするのは どようびのこども
 かわいく あかるく きだてのいいのは
 おやすみのひに うまれたこども
(谷川俊太郎訳)


この最後の二行、「かわいく あかるく きだてのいいのは  おやすみのひに うまれたこども」は、穿ってみれば主人公「アイ」を体現しているように思います。土曜日の次にあるお休みの日ということで、タイトルにつけられた『日曜日』という単語にも深い意味がありそう・・・・・・。


話がやや飛躍しましたが、つまり筆者はキャラクターの構想から見ても童話的な終焉を目指していたように思われる、ということが言いたいわけですね。

合間に生々しい世界観が入るのはあくまで物語を面白くするためのスパイスで、真にやりたかったことは、むしろ最後の『奇跡』だったのかもしれません。
そう考えるとストーリーのテンションに落差があっても、それが間違った形であると評することはできそうにありませんね。


重箱の隅をつつくようなことですが、作風という意味では、12歳の少女に容赦無く暴力を振るうシーンがあったり、ある人が凄まじい拷問を受けたりと過激な描写が多いのですが、その合間にさほど間をおかずギャグが用意している場面があって、世界観同様、「落差」に戸惑うシーンが散見されました。

前者(過激な描写)については単純に、表紙からは想像もできないくらい凄まじいものが用意されていますので、血生臭いのが苦手な人は忘れずに留意してください。



キャラクターに関しては、12歳でありながら妙に博識な「アイ」と死ねないのをいいことに凄まじいレベルで無茶をする「人喰い玩具」の掛け合いが面白く、悲観的な世界の中において読み手のテンション向上させることに一役買っています。双方生い立ちに難を抱えていることもあって、噛みあわない会話を重ねながらも根本では似通った性質をもっているのが良いですね。


「アイ」が博識なのは、コンピューターのような特性をもつ『墓守』故の知識の継承が、単純な腕力同様に血筋として流れているからなのだろうか。

とか、

「人喰い玩具」が不死になった理由は、本当に彼の思惑と不幸な偶然だけなのだろうか。

なんて疑問もふつふつと湧いてきますが、そこは「詳細を聞くのは野暮」なところなんでしょうね。一個の物語としてはきっちり完結しているのに、こういった想像する余地が残っているというのは私個人的にはむしろ高評価なポイントです。



上記以外に気なったところとしては、一部イラストに「下書き線」の消し忘れがあり、表紙以外が雑に見えてしまった点が非常に残念だったのと、歴戦の『墓守』(とはいえ最大勤務15年)「傷持ち(スカー)」さんの活躍が最後まで少なかったのが物足りなかったことくらいでしょうか。



内容が内容だけに声高にオススメとはいえませんが、気になった方は様々な点に留意しつつ購入を検討していただければ幸いです。















今回は少し長くなりました。読了お疲れ様でした。


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よくわかる現代魔法①new edition、雑感








「魔法使いの世界へようこそ」






スーパーダッシュ文庫刊行、桜坂洋著『よくわかる現代魔法①new edition』についての雑感を今回は綴っていきます。

espliaのあらすじ

道を歩けば3度転ぶ生まれつきのドジ。さらにお子様体系の「こよみ」は魔法使い募集の張り紙を偶然見つけたことから、現代魔法使いの1人である「姉原」に師事する。

目標は、ドジな自分を変えること
しかし魔法が飛び交う世界には、常に奇怪な事件がつきまとうもので・・・・・・。


読み終わった感想は「タイトル詐欺、とまではいかないが難解さが際立つ、いろいろと文句の言いたくなる作品」といったところでしょうか。



この作品の最も悪いところは、「よくわかる」というタイトルでありながらよくわからない。――言葉を変えれば知識のない人物に理解させる気がないように見えてしまうことが特筆してあげられます。

世界を『レイヤー』と言い換えたり、『アセンブラ』『ダンプリスト』などなど、私を含めてプログラミングの「プ」の字も知らない人では想像できない造語が多く、各章に単語の説明はあってもパソコン用語と魔術用語での意味の乖離が甚だしいことや理解したことを前提として本編がサクサク進んでしまうなど、とにかく優しさが足りません。



恐らくは内容への理解を深める一手段として、読み手の同じ知識量しか持たない「こよみ」というキャラクターを用意したであろうことは推して考えられるものの、読者と同じ魔術用語に全く精通していなかった彼女が後半になって突如覚醒し、

全てを理解しました

といきなり賢者モードになってしまうのはどう考えても誤用です。

それはA、B、C、とアルファベットから意味を理解し始めた幼子がいきなり英文法について言及を始めるのと同じレベルの異質さがある以上に、読者のおいてけぼり感、牽いては開いた本を閉じたくなる衝動を助長したことは容易に想像ができます。


合間にたゆまぬ努力やら、効率的な勉強法を見つけただとか、現時的な習得過程があるならまだしも、「コードを体感したのでわかった」という体感的側面からの理由付けがなされても、こちらとしては腑に落ちないばかり

トンデモ理論でいいんです。せめて何らかの具体例を示すなり、ライトノベルの強みである「イラスト」で視覚的な説明を挟むなり、彼らの言う「魔法」がパソコンのプログラムを超え、画面の外にどうやって影響を及ぼしているのかを細かく説明して欲しいというのが本音ですね。


恐らくは生体電気によって肉体から『魔法』を生み出し、異世界から力を行使する『魔法使い』がいる、という前提があり。
肉体から魔術を生む術が失われた現代において、肉体の変わりに低出力の魔術を安定して生み出せるパソコンを使うことを思いついた、という作中の地盤があるのだと思われますが、本編のみでこういった認識を絵面として思い起こせる人は希でしょう。

魔法という不確かなものがそもそも論理として飲み下せないのに、難解な語句(本来の用語との意味の乖離も甚だしい)を用いて魔法を生み出す過程ばかり説明するのでは、映像的な面白さも迫力もなく、退屈と評さざるを得ません。

電源の入っていない携帯電話にも魔法を掛けたり、理解もままならぬまま応用に突入するのも実にナンセンス



今作の『敵役』たる人物の描写が著しく少なく、登場シーンにインパクトがないこと。また結局世界をどういった理屈で世界を荒らそうとしたのかがわからないこと、などから、黒幕に立ち向かっていく主人公たちという王道展開としても弱く。アクション要素、推理要素の薄さ手伝った非常に平坦な作風はやはり人を選びます。


話の筋道として、過去の『クリスマスショッパー』事件から今回の事件に繋がっていく道程は面白いですし、そこに一般人代表の「こよみ」が関わってくるのもライトノベルらしい王道的な展開と言えるでしょう。

しかし「クリス」の存在から派生する第三者視点での行動、パソコン教室での事件、姉原の行動。様々な思惑と視点が入り乱れることで、主人公たる「こよみ」が中心軸にいられなくなってしまうのでは、そもそも意味がありません。



小難い理論抜きに人間ドラマや「こよみ」の成長物語で楽しもうにも、総合的に見れば話の中核にいるのは謎多き女「姉原美鎖」だた1人。「クリス」は生い立ちが奇抜故に想像し難く、直接的な心情描写、バックボーンが薄いので感情移入が難しいですし、上述のことから「こよみ」の影も薄いという悲惨な状況で、感動できるできない以前に間口の狭さが際立ちますね。


シリーズものの1巻なのですから、世界観の幅もキャラクターの数も必要最低限に絞り、全ての要素に「こよみ」を関わらせていくのがシンプルで良いの思われます。主人公は主人公らしく!

物語の導き手として「姉原」がいるならば「クリス」は不要。説明役も兼任できるでしょう。「聡史郎」というもはや何のために存在するかもわからないキャラも削除。削った分に黒幕の主張や「こよみ」の習熟過程をキッチリ挟めば、いっそうメリハリのきいた物語になったかもしれません。

魔法に関しても、既に用意されたものを事後で簡略説明するのではなく、一連の流れをしっかり説明した上で「絵」や「映像」として読者が想像できるレベルにまで噛み砕ことも必要でしょう。偉そうにいえた義理でもありませんが、様々な点に課題の見えてくる完璧とは言い難い作品でした。







気になった方は上記をしっかり留意した上で購入を検討してください。

しかしnew editionでありながらほとんど構成が変わっていないというのがなんとも・・・・・・。

















読了お疲れ様でした。

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リリアとトレイズ①【そして二人は旅行に行った〈上〉】、雑感








”何か得るものがある”とか言いたいんだろ?


いいえ。もし生まれ出なかったとしても、それは私達の責任じゃありませんから。ご了承ください







電撃文庫刊行、時雨沢恵一著『リリアとトレイズ①【そして二人は旅行に言った】〈上〉』についての雑感を今回は綴っていきます。

espliaのあらすじ

軍人の母「アリソン」と今は亡き父「ヴィル」の娘、――「リリア」は今年で15歳になる。
ある日、幼馴染「トレイズ」が夏休みを期に遊びに来たことを契機に、二人は有名観光地である「ラーチカ」へ旅行することに。

常にトラブルと共に生きてきた両親の血を受け継いだ「リリア」に当然安息が齎されるわけもなく・・・・・・。


読み終わった感想は「今作だけでは判断をしようがないほど盛り上がる場面がなく、描写に見るべき点があっても、ノベルとしての面白みは薄い作品だった」といったところでしょうか。



サブタイトルに「上巻」とあることから想像するとおり、今回の旅の騒動について、この1巻のみでは事件は全く解決しないことを明言しなくてはなりません。

プロット的に見ても、今作は「純粋な前編」としての機能を忠実に確立しており、例えば「ド派手なアクション」だとか「濃厚な人間ドラマ」だとか、ライトノベルらしい”ヤマ場”は皆無。一部陰謀の臭いが漂うシーンを抜かし、終始キナ臭さばかりが強調されるので、爽快感とも無縁といえるでしょう。

もともと時雨沢さんの作品は、ことさらアクションや恋愛に主眼を置いているものではありませんでしたが、今作に関しては肝心な陰謀の中核が隠れてしまっている分、よりいっそう物足りなさが強調されているように思えてしまいます。

律儀に〈上〉とサブタイトルに銘が打たれているので、完結と思いきや未完だった、という類の不快感を覚えることはありませんでしたが、今シリーズの前身にあたる『アリソン』シリーズの3巻、4巻が非常に少ないページ数でありながら上下巻に別けられていたことを考えると、「二冊で一つの物語を用意する癖」、もしくは「編集側の悪しき思惑」を想像してしまいたくなる衝動を禁じ得ません。

今巻にしてみれば十分なページ数がありますので、妥協を挟まなかった結果としての二冊完結と好意的に見ることもできませんが、なるべく一冊で完結させたほうがメリハリがつくことを考えると、この傾向をどう評するべきかの判断はつきませんね。



優良な点としては、相変わらずキャラクターを乗せる舞台。とりわけ「街」についての描写は綿密かつ濃厚で、RPGでよくある「外観ありき」の綺麗さだけではない、立体的なイメージを抱くことができます。

今回の舞台”ラーチカ”が抱える、観光業を生業としながらも客足のもどらない現状に対する町人の苦しみ、それを如実に表した閑散とした土産物屋の描写などがそれに当たるでしょうか。シーズン外れの伊豆や寂れた温泉街が思い浮かびますね。


主人公の二人、「リリア」と「トレイズ」の”仲は良くないが気安い関係”というアンバランスさ、また列車内でのチグハグな会話など人間関係の描き方も群を抜いて達者で、「トレイズ」の思惑のハズレっぷり、普段は豪気ながらも後半には精神的なモロさを見せる「リリア」などなど、活き活きとした人物像は物語への没入感をさらに助長させます。

些細な言葉、行動を使ってのさりげないギャグも顕在で、「ああ自分は時雨沢恵一の本を読んでいるんだ」と実感できる独特の雰囲気は相変わらず。


一部、「リリア」が前作の「アリソン」と違って辛辣かつ我侭だったり、「トレイズ」のバックボーンが語られないため感情移入がしにくかったり、部分部分で「しっくりこない」感覚があることについて苦言を呈したくなる部分もありましたが、前作とは違った展開を生むための苦汁と思えば飲み込める度合いでしょう。今後二人がどういった関係に発展していくのかを予想するのも面白そうです。

それでももう少し「リリア」が温和だったらなぁ、とは思わなくもありませんけどね。


前シリーズで「アリソン」と「ヴィル」が飛行機事故の折、西側の老女に一宿一飯の恩義を受けるというシーンの対比が本作の中盤に盛り込まれていたり、二人の主人公のほかに「アリソン」を筆頭とした大人グループの思惑がもう1つの軸として機能していたり、前作の読んでいれば尚楽しめるという塩梅がシリーズ愛好者にはうれしい限り。

ただ、読んでいない人にはどう捉えてよいのか戸惑う場面も少なからず散見され、1ファンとしては甲乙つけがたい悩ましい場面もありました。



今作はあくまで「上」「下」揃って、はじめて一貫した物語となります。何度も言うように今作だけの評価は著しく困難です。
しかし”ラーチカ”で起こるきな臭い騒動、「リリア」と「トレイズ」の人間関係が今後どうなっていくのかを考える楽しみ。それら上巻で積み上げたものを下巻の顛末のいかな発射台とするかに筆者の技量が掛かっていることを思えば、今作は起爆剤としての役割は果たしているのかもしれません。

これからの発展に期待大
むしろこれで下巻が失速したらパパ問答無用で酷評しちゃうぞ~。





気になった方は上記の留意点に注意し、よろしければ上下揃っての購入を視野にいれてください。











読了お疲れ様でした。


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