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紫のクオリア、雑感

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ちょっと見当たらないんだけど、――あたしの携帯、どこにあるのか、知らない?


何気ない平凡な台詞のようで、本編の最大の転機たる一文を引用しつつ、今回はうえお久光著『紫のクオリア』の雑感を書いていきたいと思います。


Espliaのあらすじ

生まれたときから人間がロボットにしか見えないという少女、毬井ゆかり。その友人である波涛マナブは、普通の少女とは一線画す存在の彼女を可愛がりながら、ゆかりを恨む「天条七美」らと共に、和やかな学園生活を送っていた。
しかしある日、世間を賑わせた「バラバラ殺人事件」にゆかりが関わっていることを知ったことで、非日常へとその身を投じていくことになる。




まず気になったのは、あとがきでも書かれているように、本編で活躍するキャラが女性しかいないということでした。主人公の波涛マナブこそ序盤は男勝りな印象ですが、後半になるにつれ、とある事情から性格が一気に変わってしまい、圧倒的な男不足が発生しています。つまり本編には、惚れた腫れたの話がほとんどありません。ライトノベルでこれを外してしまう思い切りのよさは評価するべきか否か、判断に迷いますが。

また、ライトノベルという枠組みでありながら「クオリア」という哲学的な要素に、コペンハーゲン解釈、多世界解釈などの現実寄りのSF設定を用いることで、作品の内容を補助する目的があると思われますが、どれも一言二言で言及できるような単純なものではなく、目に見えるような理論でもないため、正直な話解かりにくさが加速しているだけのようにも感じました。一応本編では、波涛マナブ、天条七美が口語で説明を入れるシーンが豊富にありますが、「本人達もよくわかっていない」説明のため、やたら長い上に要領を得ず(これは個々人感じ方が違うかもしれませんが)、嫌気が差すこともしばしば。

しかし、やはり数多くの著書を手がけているだけあって、「人間がロボットにしか見えない」という設定の発想は非常にユニークですし、友人である波頭マナブとの掛け合いもなかなか軽妙で見ていて飽きが来ませんでした。中盤で見える、ロボットに見えているからこそ出来る毬井ゆかりの第二の能力も、よくそんなことを考えつくな、と感心しつつ貪るように読んでしまったのも作者の技量があればこそでしょうか。


ただ、前述したように、天条七美との哲学(SF?)議論は内容の理解に少なからず難儀があるものの、その発想や考え方がある意味年齢相応さをかもし出していて、雰囲気作りとしては及第点だと思います。

それだけに短編ということもあって、日常生活はあくまでも「到達点」としての位置付けが強く、本編序盤でいっしょにプラモデル作ったり、自転車で出かけたり、家に泊まったりするような、暖かい日常コメディが割かし早く終わってしまい、シリアス70%、SF20%、ギャグ&恋愛10%をない交ぜにしたような本題に移行してしまうのが少しもったいないように思いました。
『紫のクオリア』に続編があるかどうかは調べていないのでなんともいえませんが、毬井ゆかりを中心とした日常のみで構成された外伝シナリオがあれば、何十冊あろうとも読破できると口外できるほど、やはり日常パートが良かったです。文庫の最後に乗せてあったマンガも実に楽しかったですし。


対比、という形で申し訳ないのですが、本編の重要なファクターである「毬井ゆかり救出編」というべきシナリオは、そういう意味では、あまり面白みがなかったと言えるでしょう。
特に、主人公たる波涛マナブが、可能性の海を自在に渡れるとはいえ、今までは考えもつかないような突飛な行動に出たり、登場キャラの一人であるアリスに対して妙に醒めた意見を持っていたり、人命を軽んじていたり、最後はよくわからない進化をしてしまったり、簡単に言えば波涛マナブが波涛マナブである意味がなくなっているように感じられました。

誰それと肉体関係を持った(明言は避けてありますが)という妙に生々しいことをいきなり語り始めたりするのが、その際たるもので、「毬井ゆかりのお友達」というキャラとしての年齢相応さ、未熟さ、熱血さが、後半全く見られなくなったのは実に残念といいようがありません。

唯一の男性キャラである「加則」も台詞が一切無く、登場人物紹介に乗せる意味があったのかどうかさえ疑わしいレベルで影が薄かったり、天条も後半は全く会話に参加しなかったり(厳密に一人語りの文体なのでそこは憂慮しても)、どうにもキャラクターをうまく扱えていない感覚が付きまといます。
彼らを本編に上手く絡め、目標をきちんと明白化させた上で到達点を示すほうが、読み手にしても書き手にしても、もっと物語を面白い形に出来たのではと思えてなりません。本当に良い題材と設定があるだけに、もったいない、という印象がどうしても拭えない作品に終始しているのは実に残念でした。


【総評】

設定良し、キャラ良し、センス有りの三拍子が揃いながらも、物語の構成で躓いてしまったことで全体の印象が悪くなってしまっています。
後半の波涛マナブという一個人の枠組みからはみ出た存在があることでキャラクターに対する愛着が湧かなかった点、一中高生にそこまでの覚悟が本当にあったかどうかの言及がなかった点(毬井ゆかりにそこまで執着する理由が私には見えてこなかったので)、目的がはっきりとしていながらもその手段が非常に曖昧な点、全体的に作者の脳内構成を丸投げしたかのような難しすぎる事象の説明など、不満として言及できる部分が多大にあることは前述した通りです。
しかし、それを加味しても「もったいない作品」というレベルに至れる程度には完成された作品ですので、「SF(あえて空想科学とも言えますが)が好き」「哲学にある程度造詣がある」「キャラクター性をさほど重要としない」という趣向の内、二つくらい当てはまる人ならば十分面白く読む事が出来る作品だと思いますので、興味がある方は一読してみてはいかがでしょうか。



読了お疲れ様でした。

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