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電波的な彼女、雑感

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おまえがどんなにクソガキだろうと、おまえはわたしの遺伝子を受け継ぐ唯一の息子で、代わりの存在はいない、ただ一人の柔沢ジュウだ。そのことを忘れるな。わたしは忘れない。(紅香)

 というわけで、今回は、スーパーダッシュ文庫さん敢行、片山憲太郎著の『電波的な彼女』(記載はされていませんが第一巻)の雑感を書いていきます。ちなみに今回以降は文庫本感想が中心になっていきますのであしからず。

 ※以前約束していた、PCゲーム「君の名残は静かに揺れて」の雑感や、「FLYABLEHEART」個別ルート感想はハードディスクの「消失」にともない、延期させていただくことになりました。真に申し訳ございません。


 さて、
 私とこの『電波的な彼女』の著者である、片山憲太郎氏との出会いは、テレビアニメにもなった同社敢行の『紅』という作品からでした
 

 (『紅』は、主にのんびりとした日常の中を描きながら、『揉め事処理屋』という非日常の担い手をそこに投入することで、昨今の凶悪する犯罪に対する著者人の末世感というもの織り交ぜた退廃的な雰囲気が非常に魅力的な作品で、時期としてはこの『電波的な彼女』シリーズ以降に書かれた作品となります。)


 その文体は一見して改行が少なく、心理描写と地の文が一体化した特長的なものですが、そこに描かれる会話にしてもギャグにしてもセンスが抜群で、一読すれば他のラブコメディーで味わえるような歯ごたえの良い甘美な学園生活に羨望の感情を抱く一方で、行われる残忍な殺人や殺伐とした日常に怒り、それを駆逐していこうとする、気弱ながらも芯の強い主人公の気概に心を震わせられるなど、まさに文章で体言することのできる読み物としての本懐を全うしているようにさえ思いました

 描写が一部残酷すぎることと、妙に作品全体から漂う児童虐待や性的暴力への執着めいた表現が多いため、少なからず大衆に好かれる作風ではないでしょうが、むしろそういった「負」の側面をきっちりと描き、読者に対して常に疑問を投げかけてくるような構成には個人的に好感が持てました。

 ただ女の子と仲良く、色恋沙汰にドタバタと学園生活を送るだけ、というコンセプトの作品も決して嫌いではありませんが、この『紅』のように犯罪や社会情勢を絡めた現実的な部分を本編に混ぜ込み、決して奇麗事では済まない現実を前面に出した上で、「私はこう考えているんだ」という筆者自身の強い主張が多く語られていることは、まさに意欲作というべきパワーを感じられます。
 文庫本(約300ページ基準)一冊につき読破に4時間は掛かる私ですが、この『紅』にはその倍の時間と倍の考える楽しみを与えてもらいました。


 少々話が他所に行き過ぎましたので『電波的な彼女』の方の具体的な感想に移ります。



 今作は、『紅』にも登場する「柔沢紅香(じゅうざわべにか)」の息子、不良もどきの高校生「柔沢ジュウ」が主人公の作品です。


 Espliaの簡単なあらすじ


 何の前触れも無く「前世からの絆」として主従(奴隷)関係を迫ってくる「堕花雨(おちばなあめ)」という少女が現れ、ストーカーのような行動をとり始めた一方、主人公ジュウは町で起こる「連続通り魔殺人」に身近な人間を殺されたことで、その犯人の正体を探っていくことになる。
 どこか「電波的」な雨の発言や行動に、ジュウは徐々に彼女こそが犯人ではないかと疑い始めるが・・・?




 地の文に心理描写を巧みに絡めたり、雨やクラスメイトの香奈子(かなこ)、美夜(みや)との会話のセンスやギャグ、自称不良ながらもあまりに良い性格の主人公の「格好よさ」が読み手を物語に釘付けにしている点はさすがでしょうか。
 卓抜した電波的言動がなかなか濃い目のヒロイン「雨」の凄まじい飛びっぷりに、前半こそ辟易させられるものの、後半からはとっつきにくさが取れ、元来の可愛らしさと頼もしさがグッと引き出される構成も見所の一つといえるでしょう。

 全体的には『紅』同様、学園でのドタバタ劇を中核としつつ退廃的な世界観を匂わせる作風は今作も顕在で、先述した性的暴行への表現的な執着を筆頭に、両親が変わり者のせいで幼少期に辛い思いをしたジュウの過去話など、読み手を憂鬱にさせる構成になっている点は注意が必要でしょう

 言い返ればその部分が、あえて後半の展開を引き立たせるための演出だ、と納得できる人ならば、この『電波的な彼女』は「買い」の作品だと言えるでしょう。

 又、「社会の闇」とは、「悪」とは、「人が生きるということはどういうことなのか」など、どこか答えの出ない哲学的なことに思いを馳せてしまう人などには特にオススメできると思います。(私自身そういう考えてどうにもならないことを考えることが大好きなので)


 ただ不満点もやはりあります。

 それは、本作の肝である通り魔殺人の犯人。これがあまりに解かりやす過ぎること。そしてその犯行に至るまでの動機があまりに痛ましすぎることがなどが挙げられます。


 勿論小説として販売されたものですから、読み手が心動かされるようななんらかの「インパクト」が結末に必要なのはわかりますよが、これほどまでとなると、最早ライトノベルで出して良い次元を超えているように思えてなりませんでした。

 何度も強調するようではありますが、著者である片山憲太郎氏はどうにも性的な犯罪性というものに重きを置いている風潮がありますので、当然といえば当然の主張ではあるのでしょう。

 ただ、単純に演出の駒として消費された「とある被害者」の一人にしても、犯人にしても、これではあまりにも報われなさ過ぎるように思いました


 良い意味でも悪い意味でも、その胸を掻き毟られるような痛ましさに、思わず絶句せずにはいられませんでした。


 【総評】


 ミステリーとしてではなく単純な読み物として読むならば最高峰の文章センスに、山本ヤマト氏の原画が映える主人公ジュウを筆頭とした魅力的なキャラクターは一読の価値ありです。

 ただ、上にも書いたように綴られる犯罪や犯行方法の残虐さ、一部キャラクターのあまりにも悲惨な扱い、幼少期の主人公の不憫さなど、作風全体に漂う負の側面がかなり強い個性として我を主張していて、ある程度「後味の悪い小説」を読んでいる人でないと心理面の負荷が洒落になりませんので、そこは留意してください。

 残酷な描写がある程度の容認でき、結末が完全なハッピーエンドでなくても作品自体が読み物としての楽しさに溢れているならば問題無い。そんな人ならば、この『電波的な彼女』は間違いなくオススメの一冊と言えるでしょう

 既に敢行から6年、古本屋にもよりますが比較的安価(私は100円でした)で入手できる作品ですので、この記事で気になった方は是非、第一巻(シリーズは三巻まで出ています)だけでも騙されたと思って購入していただければ幸いです。
 ちなみに小説に慣れ親しんだことのない人であっても、残酷な描写にさえ慣れていれば、その読み易さ故に「小説デビュー」の先駆として購読してみるのも良いかと思われます


 追記

 マンガ版「紅」の特典として、『電波的な彼女』は既にDVDでのみアニメ化しているそうですね。全く知らなかった・・・。

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