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幕末魔法士、雑感


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私は今日みたいな夏晴れの日に生まれたんだ。

だから――






電撃文庫刊行、田名部宗司著『幕末魔法士-Mage Revolution-』についての雑感を今回は綴っていきます。

あらすじ

明治維新が始まろうとする幕末の日本。
大坂適塾で学ぶ優れた蘭学者、魔法士「久世伊織」は、塾長の命でとある魔道書を翻訳するため、出雲は松江へと赴くことになるのだが・・・・・・。



読み終わった感想は「物語の見せ方がうまい一方、踏むべき手順を踏んでいないが故に物足りない印象が残った作品」といったところでしょうか。



本編最大の魅力は、主人公兼ヒロイン(?)「久世伊織(くぜいおり)」の生い立ちにまつわる謎と、ヒロイン(?)兼主人公「失本冬馬(しもととうま)」の出生の謎。この二点を上手く使った性別偽装についての解答や、物語の動かし方にあったように感じられました。

イラストを含め、最序盤から「久世伊織」が女であるという認識を読み手に植え付けながら、「どうして女性であることがバレないのか」という根本的な疑問に対するネタを仕込んでいるのはなかなかに斬新な見せかたであるように思います。


ただ「伊織が実は男ではなかった」という最重要部分でのインパクトが薄く、中盤までの問答がやや薄ら寒いものになってしまっていること。

また最初から「伊織」の姿を見通しているはずの「冬馬」が、男だと信じきっていた根拠の薄弱が気にかかる点はやはり「男装女子」ジャンルとしては弱く、シナリオ上の面白みはあっても、驚嘆を引き出せるレベルではありません


「伊織」と「冬馬」の主観を使い分けた物語の構成ながらも、やはり女性主人公ということもあって感情移入がしにくく。主人公でありながら上の問題(性別)故、内情があまり語られないこともあり、読み手が主人公になりきって楽しむことが著しく不可能。


私的には、ここはいっそ男性であり、本編では「伊織」よりも内面描写のある「冬馬」を主人公に設定。イラストや文章でも「伊織」の性別をひた隠しに、最後の最後でネタばらしするのが王道かつ常道ではないかと愚考するところ。これぞいわゆるギャップ萌え


まぁ私の考えだと、表紙が男(に見える)キャラのみになり、ジャンル超えそうな危なっかしさを演出してしまう可能性が高くなりますが・・・・・・。



世界観に関して気になることも多く。

幕末魔法士という存在についての根本的な疑問はさておき、登場する全員が全員「西洋の言語を用いた魔法士」であるというのが個人的には残念でありました。

日本の魔道といえば、深い知識はなくとも「陰陽道」。 

それをそっちのけにして、なんだかよくわからないラテン語?を多用して展開されるバトルは、幕末という時代背景にあってなかなか奇異なものが感じられますね。

よしんば、外海の魔術にスポットを当てるにしても、味方も敵も、やられ役も全員西洋かぶれというのもバリエーションに乏しい印象を拭えません。

呪文の語感。また今後続刊を売り出すに当たって、「西洋VS東洋」の図式がやりたいがための出し惜しみなのという考えかたも間違いとは言いませんが、せめて「伊織」だけは和の装いを貫いて欲しかったというのが本音です。


人によって感じ方は違うと思いますが、呪文1つでどんな不思議現象も思うが侭、みたいな棒立ち図式で行使される魔術の面白みのなさ

また魔術を使う上での致命的なリスクや弱点への記述が薄いことによる展開の薄っぺらさが加わり、いかにも詩的で、「カッコよさげな」単語を羅列されたとしても、余計に想像力が働かなくなるだけで終わってしまいます。


後半になればなるほど、この微妙な詠唱が連続で続くため、その過剰装飾っぷりに辟易してしまうことも。せめて「印」を結ぶなり、魔術にのみ依存しない戦術を編み出して欲しかったですね。

オリジナルが輝くのはやはり綿密な設定があってこそだと思いました。



上記の戦闘描写の難に加え、今作の敵役が(隠されてはいても)あからさまな人物であった他、迫力もなく、どこか思想も中途半端であったため、死闘というほどに焦りや憤り、緊迫感を得られなかったのは大きな痛手でしょう。

大逆転の一手が「戦略」ではなく「性能差」や「血筋」に強く依存していることも含め、消化試合、というと語弊がありますが、もう少しそれなりの演出の強化が欲しいところでありました。

主人公両名の生い立ちや性別が終盤まで隠される。それはつまり、人間性をウリにするには物足りない舞台なわけですから、それ以外の演出が物足りないのは作風として致命的であると言えるでしょう。


見せかたはとても面白い。しかし言ってしまえば終盤まで読んで、初めて1つ感動できる、というレベルでしかない。そんな風に感じました。


文章そのものは読みやすいですし、インパクトは薄くとも起承転結もしっかりしているので駄作とは間違っても評せませんが、王道に行くならば王道へ、奇抜にするならもっと奇抜に。メリハリをつけてハッチャけたほうが面白い作品になったかもしれませんね。




気になった方は上記に留意しつつ、購入を視野に入れていただければ幸いです。















読了お疲れ様でした。
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○2012/04/02○
『幕末魔法士-Mage Revolution-』は一巻だけ読みました。

しかし、内容はあまり覚えていなかったりして。

異能の力は「雷」だったでしょうか?

三巻まで出ていたと思うので、一気に買ってもいいかもしれませんね~
[ 編集 ]
○2012/04/07○
返信が大幅に遅れました。申し訳ありません。そしてお久しぶりです~。

> 『幕末魔法士-Mage Revolution-』は一巻だけ読みました。
> しかし、内容はあまり覚えていなかったりして。

よくも悪くもありきたりな題材ですし、とくに目立った文体というわけでもなく。読みやすい変わりに印象が薄くなってしまう可能性は高いですね。作品のインパクトという意味では他のライトノベルと同水準とはいかなさそう。

個人的にはやたらめったらお約束な展開が用意されていない点や男性キャラにもしっかりスポットが当たっているということもあってさほど嫌いではないのですが、もう少しキャラクターの掘り下げと展開に色をつけて欲しかったところ。

> 異能の力は「雷」だったでしょうか?

いろいろ出ていましたが、伊織の属性は雷と風みたいですね。どこぞの魔法先生みたいだなぁ・・・・・・。
落雷されて生きていられる人間(ではないか・・・・・・)がいるかは疑問ですが、自然に起こる落雷と魔術ではどの程度、威力に差異が生ずるのか、生身で何発の魔術を撃てるのか、そのあたりの独自理論を展開させてくれれば
尚良かったですね。

> 三巻まで出ていたと思うので、一気に買ってもいいかもしれませんね~

1巻でも十分完結するんですが、バリエーションや世界観を深く掘り下げるにはやや力不足ですからね。2巻は今後買う予定なので、たぶん感想を書くと思います。
[ 編集 ]
○2012/04/07○
浅黒い肌に白髪といった外見がどこぞのアーチャーを彷彿とさせたくらいか。

私事だが夏までコメントが遅れる事が多くなると思う。
[ 編集 ]
○2012/04/07○
いつのまにかコメントが・・・・・・・。

> 浅黒い肌に白髪といった外見がどこぞのアーチャーを彷彿とさせたくらいか。

我が骨子は捩れ狂う、みたいな感じででばっきばきにされたね。ああいう血筋からして無敵魔神系(Hellsingのアーカードみたいなの)は嫌いじゃないんだけど、映像でなく小説で見ると微妙だよね。そういう手合いはむしろ味方なんだけで滅多に戦わない「師匠」みたいな位置付けにいるべき、というのが持論。

> 私事だが夏までコメントが遅れる事が多くなると思う。

了解。
私も今後二ヶ月くらいは今の状態になるので、まったり進行しつつ待ってます。

しかしこの時期に忙しいと聞くと、「あの日」の締め切りなのでは、と思い馳せてしまう自分が嫌。
[ 編集 ]
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