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神さまのいない日曜日、雑感








あなたを一人にはしません。

それは墓守の役目ですから。






富士見ファンタジア文庫刊行、入江君人著『神さまのいない日曜日』についての雑感を今回は綴っていきます。

espliaのあらすじ

15年前に、この世界は神に見捨てられた。なぜか人は生まれず、死者が死ぬこともない。

そんな世界でも「アイ」は、今日も愛用のショベルで墓を掘る。
彼女は死者を「死者として」埋葬できる『墓守』と呼ばれる存在であった。


読み終わった感想は「リアルとファンタジーがぐちゃぐちゃに交じり合った不可思議な雰囲気に良くも悪くも魅せられる作品」といったところでしょうか。



富士見ファンタジア文庫「大賞」受賞ということで、さすがというべきか、退廃的な世界観の演出は素晴らしく。人が死ねなくなった世界の荒廃ぶりとそんな世界に遣わされた『墓守』と呼ばれる異質な存在への言及、またそれら世界観をうまく用いた伏線も上手く用意されていました。15年前から子供が生まれないのに「12歳のアイ」が存在するという矛盾がその最たるものでしょうか。


全体を見通せば小難しい設定ばかりが目立ちますが、終盤に至ってのオチのつけかたは実にファンタジック――よく言えば「童話的」で、キャラクター達の動向に明確な理由を用いないが故の、想像する楽しみが生まれているように感じられます。


しかし物語の随所に、国や社会、学校や腐敗などの現実的ワードを用いて説得力のある設定を散らしながら、終盤の展開や『墓守』などに対する作中でもっとも重要な部分への説明が、「神さま」や「運命」といった非現実的なワードであっさり片付けられてしまい、どこかチグハグとして印象があるのも事実であります。


張られた伏線には悲しいくらいに筋道が通るのに、最後の最後にだけ「理屈なんていらない!」とばかりに『奇跡』を用意されても、切り替えが追いつかない人にはなんともいえない読後感になってしまうでしょう。この辺りの塩梅は非常にもったいない。


童話のように物語を終わらせたいなら、小難しい世界観は控えるべきである、とまでは言いませんが、もう少し現実的描写と幻想的描写の境をなだらかにしたほうがすんなりと読み終えられるのかもしれません。


ただ童話的な話の締め方を指し、ずばり「悪い」とは一概に言えないであろう、と思うのが私自身の考えで、例えば重要人物の一人である「人食い玩具(ハンプニー・ハンバート)」が『マザーグース』の「ハンプティ・ダンプティ」を捩(もじ)っていると考えられることが、その理由の1つとして挙げられます。

諸説や解釈、なぞなぞの答えにいたる経緯はこの際省きますが、『不思議の国のアリス』にも登場する彼のハンプティ・ダンプティは、「いったん壊れてしまえば王でさえ元に戻すことができない」という解釈から『卵』の姿で描かれることを知っている人は多いでしょう。

筆者がその点に影響を受けているかは字面で判断しようもありませんが、「死んでも(壊れても)生き返る」という「人喰い玩具」の性質と、上記の「壊れれば誰も直せない」ハンプティ・ダンプティの性質は、神さまのいない世界、だからこそ成立してしまった皮肉として用意されているとも考えられそうです。

また『マザーグース』の詩に「月曜日生まれのこども」というものがあり、


 うつくしいのは げつようびのこども
 ひんのいいのは かようびのこども
 べそをかくのは すいようびのこども
 たびにでるのは もくようびのこども
 ほれっぽいのは きんようびのこども
 くろうするのは どようびのこども
 かわいく あかるく きだてのいいのは
 おやすみのひに うまれたこども
(谷川俊太郎訳)


この最後の二行、「かわいく あかるく きだてのいいのは  おやすみのひに うまれたこども」は、穿ってみれば主人公「アイ」を体現しているように思います。土曜日の次にあるお休みの日ということで、タイトルにつけられた『日曜日』という単語にも深い意味がありそう・・・・・・。


話がやや飛躍しましたが、つまり筆者はキャラクターの構想から見ても童話的な終焉を目指していたように思われる、ということが言いたいわけですね。

合間に生々しい世界観が入るのはあくまで物語を面白くするためのスパイスで、真にやりたかったことは、むしろ最後の『奇跡』だったのかもしれません。
そう考えるとストーリーのテンションに落差があっても、それが間違った形であると評することはできそうにありませんね。


重箱の隅をつつくようなことですが、作風という意味では、12歳の少女に容赦無く暴力を振るうシーンがあったり、ある人が凄まじい拷問を受けたりと過激な描写が多いのですが、その合間にさほど間をおかずギャグが用意している場面があって、世界観同様、「落差」に戸惑うシーンが散見されました。

前者(過激な描写)については単純に、表紙からは想像もできないくらい凄まじいものが用意されていますので、血生臭いのが苦手な人は忘れずに留意してください。



キャラクターに関しては、12歳でありながら妙に博識な「アイ」と死ねないのをいいことに凄まじいレベルで無茶をする「人喰い玩具」の掛け合いが面白く、悲観的な世界の中において読み手のテンション向上させることに一役買っています。双方生い立ちに難を抱えていることもあって、噛みあわない会話を重ねながらも根本では似通った性質をもっているのが良いですね。


「アイ」が博識なのは、コンピューターのような特性をもつ『墓守』故の知識の継承が、単純な腕力同様に血筋として流れているからなのだろうか。

とか、

「人喰い玩具」が不死になった理由は、本当に彼の思惑と不幸な偶然だけなのだろうか。

なんて疑問もふつふつと湧いてきますが、そこは「詳細を聞くのは野暮」なところなんでしょうね。一個の物語としてはきっちり完結しているのに、こういった想像する余地が残っているというのは私個人的にはむしろ高評価なポイントです。



上記以外に気なったところとしては、一部イラストに「下書き線」の消し忘れがあり、表紙以外が雑に見えてしまった点が非常に残念だったのと、歴戦の『墓守』(とはいえ最大勤務15年)「傷持ち(スカー)」さんの活躍が最後まで少なかったのが物足りなかったことくらいでしょうか。



内容が内容だけに声高にオススメとはいえませんが、気になった方は様々な点に留意しつつ購入を検討していただければ幸いです。















今回は少し長くなりました。読了お疲れ様でした。


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○2012/03/15○
あらすじからビンビンと感じる場違い感、コレジャナイ感で購入を見送った作品。賞取ってたはずだけど面白そうに感じなかった。

児童書とかで出せばあるいは……ダメか。
[ 編集 ]
○2012/03/15○
> あらすじからビンビンと感じる場違い感、コレジャナイ感で購入を見送った作品。賞取ってたはずだけど面白そうに感じなかった。

私も賞を取っているから面白いとは思えない人間なんですけど、近作の世界観の練り込みはなかなか秀逸で、賞うんぬんは度外視しても、一考することのできる作品だと思いましたね。

『場違い感』、というと表紙と設定の乖離ということですかね? それとも、ライトノベルでやるべき題材じゃない、ってことかな?

私の場合、値段が安ければ基本何でも買ってくる性質で、さほど酷そうでなければあらすじで購入候補から切るっていうのはあんまりしませんね。原価で買うより「外れた時」の期待はずれ感も薄く、予想外に面白ければ期待以上に喜べるので、なかなかお得な性格やも。

記事では事細かく書いているっぽいですけどほとんど的は射てないでしょうし、肝心な部分はやっぱり読んだ人の感想だと思うので、あまり引きずられず気になったら買ってみてくらはい。

> 児童書とかで出せばあるいは……ダメか。

無理っす。部分部分がエグいっす。
あくまでライトノベルでの童話的雰囲気であって、実際の童話に追いつけるものではないなぁ。

ボーカロイドでどれほど頑張っても、既存のJ-POPには適わない、みたいな宿命よね。
[ 編集 ]
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