espliaのちょっとだけ時代遅れ。

生むは雑感、生きるは過去、ちょっと遅れた感想中心ブログ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*
スポンサー広告 ○ Trackback:- ● Comment:-○

さよならピアノソナタ、雑感






大勢人を集めて喇叭を吹くだけが革命じゃない。
人間がなにかを為そうと思ったら必ず、実らないかもしれない種を荒野に蒔くことから始めるんだ。





電撃文庫さん刊行、杉井光著『さよなならピアノソナタ』についての雑感を今回は綴っていきます。

Espliaのあらすじ

「桧川ナオ(ひかわなお)」の通う平凡な高校に、なぜか転校してきた天才ピアニスト「蛯沢真冬(えびさわまふゆ)」。
彼女は傍若無人で偉そうで、本当にワガママな少女だった。
ある日。ナオは校内で唯一好き放題にCDを掛けられる部室を真冬に占拠されたことに腹を立て、部室を奪還する旨を高らかに宣言した。

――ベースで真冬を“ぶっとばす”。


読み終わった所感は「終始音楽という方向性を曖昧にしない、完成された作品だった」というところでしょうか。


本作の見所は、計三つに分類され。それぞれ『会話の面白さ』、『伏線の上手さ』、『音楽というキーワードに忠実であったこと』が挙げられ、非常に高次元に纏まっていたように感じられました


まず、会話の面白さですが。
本編に登場するキャラクターの設定や口調、動向は、例えば『暴力的な幼馴染』、『傲岸不遜でありながら策士な年上の先輩』など、実にありきたりな印象が残るものではあります。
しかし主人公の突っ込みを始めとした「話法の充実振り」、「会話のつなげ方の上手さ」や雰囲気は、それらを魅力的に一変させてしまうほどの力があったように思いました


一見して友人同士のバカな世間話だったとしても、これを我々が「自然に感じる」ように書き手が形作っていく作業というのは、予想以上に困難なものであることは言うまでも無いでしょう。それだけにこの筆者の会話文の巧みさには、題材の素朴さで油断を誘われたぶん、殴りつけられるほどの衝撃さえ感じるものでしたね。


中でも、ヒロインの一人である「真冬」の、「自分がワガママであることを全てわかった上でワガママに振舞う」複雑多感な少女特有の繊細な行動が丁寧に描かれていて、無意識に他人を傷つけてしまう天然なキャラクター像とは違い、彼女自身の一種のキャラ作りに似た人間らしさが滲んでいるように思えました。


ただ勿論、ワガママは結局ワガママでしかなく、そこは一切何の妥協もなく傍若無人な行動が目に余る部分も多く、「こんな可愛い子に翻弄されるなら本望だ!」くらいの気持ちで望めないと、恐らくストーリーを最後まで楽しむのは難しいでしょう。良くも悪くも常識人しか受け入れられない人にはオススメできません。




次に伏線がしっかりと本編に根付いていることについてですが。

上に記したよう、真冬がワガママなキャラを敢えて造っている理由。学校で他者を寄せ付けず、教師に従わず、授業もまじめに受けないことへの単純明快な解答が、物語の後半にきちんと用意されていたことは、今作において紛れも無い評価のポイントだと私は思っております。


なぜ彼女は誰に対しても反抗的で、主人公にまでキツく当り散らしているのか。

本編を通して、「ああそういう性格なんだな」と半ば諦めていた根本的な土台が、ストーリーを読み込んでいくことで明らかになっていく爽快さ。そしてそんなものを見事仕込んでくれた筆者の狡猾さにニヤリとくる一瞬は、まさに「小説を楽しむことそのものではないかとさえ錯覚してしまいますね。


伏線の内容そのものは、正直に言って私の中では「一度見たことのあるもの」ではありましたが、それを抜きにしても、ストーリーに良い意味で起伏が生んでいることは諸手を挙げて賞賛されるべきではないでしょうか




最後に音楽というジャンルに徹底的に固執したことに関してですが。

「ピアノソナタ」という題目を掲げ、それに伴うよう、物語の根幹に「音楽の楽しさ」を徹底的に練り込み、オチの部分やキャラクター達のセリフや動向に、有名音楽家の逸話を組み込むことで、一個の作品としての完成度が非常に高くなっているのだと、私は思っております。


「某有名軽音楽漫画」を槍玉に挙げるのは非常に忍びないのですが、この作品は音楽というジャンルを用意しながらも、それをあくまで「日常」や「青春」の代替物として変換してしまうことで、多くの人に受け入れられる体制に作り直している節が見られますよね。


もちろん、それらは所謂「大衆向け」とするために用意された「苦肉の措置」であって、決して音楽を子馬鹿にしているなどということは絶対にないことは言うまでもありません。将棋漫画でありながら、人間関係に比重を置いた漫画『三月のライオン』という絶賛される作品があるように、それらの措置とエンターテイメント性の如何は、必ずしも同調しません


しかし専門用語を極力廃し、誰にでもわかりやすい作品に簡略化するということは、その分、徹底的に突き詰めていく異端さと、真新しさが欠如してしまうことも事実であります。


その点今作では、有名音楽家の逸話や、音楽史、専門的な技術に、楽曲名をふんだんに本編で用い、簡略化されていないからこその深い掘り下げと真新しさを獲得しながら、音楽に明るくない人をも引き込むストーリー構成と丁寧な解説ヒューマンストリーとしての旨みを忘れずに用意したことによって、「音楽というジャンルへの飽くなき探求を捨てずに誰でも楽しめる」という二面性を上手く建立させているように感じられました。


私自身、あまり音楽には明るくない側の人間なので、その専門性がどの程度かを測る物差しは持ち得ませんが、この点においては惜しみない賞賛を送りたいですね




唯一の不満点は、物語の結末で。
あれら伏線を回収しきった後、真冬という少女がいったいどのような変調を齎したのか。それを最後最後でぼやかしてしまう物語の終え方は消化不良というほかありません。


もちろん、その繋ぎが次巻の「門」だと言われれば納得の余地がないとは申しませんが、あのストーリーを経た真冬を今巻で見てみたかった。というのが偽らざる気持ちです。


もう一エピソード用意して欲しい、とまで声を荒げるつもりこそありませんが、最後に一言でも真冬のセリフがあれば、それがいつもと変わらない口調であったとしても、すっかり大人しくなってしまったとしても、オチとしては非常に奇麗な形で終えられたように思えてなりません


結末は貴方に委ねます。といった技法は、どうにもモヤモヤするんですよねぇ。
筆者が書き上げた物語は、筆者によって幕を引かれるべきではないでしょうか。






一部、不満に思う部分はありましたが、全体的に見て非常に上手く纏まった秀逸な一作でした。オススメの一冊です。




気になった方は是非一読してみてください。









読了お疲れ様でした。

スポンサーサイト
*
○2011/04/08○
我の強すぎるメインヒロインがラノベの傾向であるけれど、主人公に理不尽な暴力を振るうような者にどうして共感できようか

そんな事考えてるからどうしてもサブヒロインの方に共感するがサブだから結局報われない場合が多いんだよな

MF文庫でそんな場合が一番多いのは「ゼロの使い魔」を模倣しているからだろうか?
[ 編集 ]
○2011/04/08○
> 我の強すぎるメインヒロインがラノベの傾向であるけれど、主人公に理不尽な暴力を振るうような者にどうして共感できようか

うーん、やっぱりその辺りは好みが別れるよねぇ。個人的には言葉の暴力(『俺の妹がこんなに~』の桐乃レベル)程度なら可愛いもんだと思えるけど、「理由無く」実際に踏んだり蹴ったりする陰湿な暴力は好きに慣れないかなぁ(『天国に涙はいらない』の律子レベル)。もちろんどっちかっていうと私も常識人や所謂「突っ込む側」の方が好き(上の例で言うなら「黒猫」など)なんだけれども。
そんな訳で、「テイルズシリーズ」なんかだと基本的にメインヒロインが一番になっちゃう感じかな。

> そんな事考えてるからどうしてもサブヒロインの方に共感するがサブだから結局報われない場合が多いんだよな

AVDみたいに全員ハッピーエンドって訳にも行かないからなぁ、サブヒロイン好きは苦労しますわな(『とらドラ!』の亜美、『とある魔術の~』の五和とか)。ただシナリオに幅を出すためには、どうしても「嫌い→好きへの変化」みたいな、大きな感情変化が描き易いし、我が強くて突っ走る傍若無人娘は、物語を書いてる側だとどうしても扱い易くてねぇ。そういう意味で言うならば、『最終兵器彼女』のちせみたいなヒロインは上手くその辺を回避していて、斬新に感じるかも。

とはいえ、強気娘が時折見せる憂いの表情というのも、これはこれでやっぱり捨て難い!!(長くなりそうなんで割愛)

> MF文庫でそんな場合が一番多いのは「ゼロの使い魔」を模倣しているからだろうか?

犬、だとかなんだとか。読んでいないからちょっとわからないけど、『とらドラ!』がアニメ化されたときは散々似てるって指摘があったようですなぁ。でも一物書きからしたら、人気のある作品を模倣すれば有名になれる!なんて考えはあんまり持っていないような気もするから(ちょっと願望込み)、極論でいえば編集側がメディア受けを狙って、という考え方からそうなった可能性はあるかも。


今回も長々と書いてしまって申し訳ない。
[ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL


twitter
ブログに対する掲示板の役割を兼ねておりますので、出来うる限りこちらにも目を通していただけるとありがたいです。

フォローしてくださるお方は「esplia」と検索して頂くと簡単に見つけられると思います。


espliaの生態


esplia

Author:esplia


【読書中小説】
神様のいない日曜日
幕末魔法士
KAGUYA~月の兎の銀の箱舟~
文学少女と死にたがりの道化
中の下!
曲矢さんのエア彼氏


【プレイ中(&予定)ゲーム】
黄昏のシンセミア
elona
グリザイアの果実
はつゆきさくら【済】
穢翼のユースティア【済】


【鑑賞中音楽】
嘆きの音
Dead End
borderland
少年よ我にかえれ
ノルエル
灰色の水曜日


【オススメゲーム】
FLYABLE HEART
永遠のアセリア(なるかな含)
遥かに仰ぎ、麗しの
装甲悪鬼村正
Fate stay night(hollow含)
てのひらを、たいように
月光のカルネヴァーレ
君の名残は静かに揺れて
BALDRシリーズ(戯画)
ひぐらしのなく頃にシリーズ
うみねこのなく頃にシリーズ
東方シリーズ(SLG、文、WS含)
夜明け前より瑠璃色な
CROSS†CHANNEL
リトルバスターズ!
CLANNAD
STEINS;GATE


恒久的に不定期更新ですが、
よろしくお願いします。

週一更新005


当ブログはリンクフリーです。
こちらから打診した場合は了承があるまでリンクには追加いたしません。

ブログ内検索
ブロとも申請フォーム
メールフォーム
相互リンクの申請は、
「ブロとも申請フォーム」
または、
ここにお願いします。

名前:
メール:
件名:
本文:



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。