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カッティング~case of mio~、雑感






けど――、お前らがミオを苦しめたのも事実なんだ。
僕はただ、それに怒ってるだけだ。





HJ文庫さん刊行、はね田大介著『カッティング~case of mio~』についての雑感を今回は綴っていきます。

Espliaのあらすじ

己の内面と自らが浮かべる様々な表情の乖離に悩む少年「相坂カズヤ」は、他者から距離を置き、凛とした佇まい持つ美しい少女「西周ミオ」に惹かれ、交際を申し込む。

「貴方は “傷ついたアクセサリー”が好みなのかしら?」

そう自らを評した彼女の手首には、痛ましい自傷の痕があった。


読了後の感想は、「題材は解かり易いが、掘り下げの甘さが目立った」といったところでしょうか。


本作において誉めるべきは、主人公である「相坂カズヤ」が内面と表層に二面性を持つ、という、一転してみれば反抗期特有の気難しさの発露とも取れる状況でありながらも、その責任を親族に押し付けることなく、自身に全ての責任があることを把握している点が挙げられます。


虐待を受けた子供は凶暴になる。という世間一般に流布する規則性に意を唱えるような無体はいたしませんが、やはり人間の異常性を他者に求める法則は「ありがち」ですからね、意外性という意味で見れば、これはこの作品の評価すべき特色だと言えるでしょう。


(まぁ、私としては安着だとしても、他者にその責任を押し付けたほうが読み手の共感性も得られやすいですし、書き手にしても簡単に論理性を持たせられるので、むしろ後者の方が好みだったりしますが、関係性が薄そうなのでこの話はいったんここで割愛とします。)


また上記の結果、カズヤの身内話には影がなく、むしろ本編においては唯一のギャグ要素としての役割を忠実に果たしており、家事万能の父親、家事壊滅の母親、ブラコン気味の妹と織り成す軽妙な掛け合いには、読んでいて何度も頬を緩ませられました。


加え、一見とっつきにくそうな「ミオ」との初デートで見せる初々しい仕草なども秀逸で、映画を楽しむよりも、相手に気遣うことに必死になっている二人の様子には非常にニヤニヤさせていただきました。高校生という花の盛り、日常を謳歌する主人公二人の描写を、一冊を通して丁寧に書いていることには好感が持てますね




しかしその一方で、リストカットをすることにより自己同一性を確立しようとする少女と、己に乖離した二面性を感じることで常に冷静でしかいられない少年の恋。という突拍子も無いストーリーの土壌は、恋愛を語るにおいて、この上ない痛手であるように感じられてしまったのが現状です。


少女がなぜ己の手首を切り、自傷に及ぶのか。
その説明を心理学と作者の解釈の混じった説明を用いて結んでこそいますが、やはりどうしても漠然とした、観念的な概要が主成分であることを免れられず、はっきり言えば「いまいち納得できない」。実感のない理屈を脱しきれていないように感じました


何より、綴られる説明そのものがどこか書物で聞きかじった知識を披露しただけの「説明口調」の体裁の枠を越えておらず、読み手と書き手との相互理解に必要不可欠な感情面において十分に納得のいかない場面が多く見られました。


更に言い募れば、


  私という存在が、どうしようもなく断絶している。(本書籍P47、12項参照)


といったような詩的な表現が更に混じってしまう部分もあり、一層わかり難さに拍車をかけてしまっている印象も強くありました。




また説明口調といえば、本編での「転」に当るES細胞から臓器を製造する組織、というSFめいた設定が出現することにも起因し、我々の見識に新しい、再生医療について触れられていることにも言及ができるでしょう。


クローン技術との関連性から生物倫理を引き合いに出し、再生医療を負の方向性から解体していく発想は理解を得やすいメリットがあり、安定感があるようにも思えました。
が、結局のところ、本編を通してそれ以上に深い掘り下げ及び解釈は見られず、首尾、一貫して「やや安着な発想」以上でも以下でもない、という感想に落ち着いてしまったように思えました。


普通の学園生活を送っていた二人に襲い掛かる説明不足気味のSF要素、というのも唐突といえば唐突で、そこに繋がっていく伏線を前半に飛散させる処置を怠り、根回しの物足りなさを露見させることとなったのではないでしょうか。


後半の展開が紆余曲折の無い非常に平坦なものであり、オチに奇抜さがないことを含め、小説としての面白みに欠けていたように思えてしまい、総合的な心象はあまり芳しいものではありませんでした




【総評】


主人公の異端性を他者に押し付けることなく、自己で完璧に処理しきっている点、それに伴い、家族や家庭の温かみが伝わる一幕が目を引き、非常に好意的に思える場面が多数見受けられました。


その一方で、特異なキャラクターを多く使うことで読み手との共感性が希薄なったにも関わらず、実用書の書面に似た、説明臭さを拭えない心理描写を多用してしまったことで、その幅を一気に広げてしまった感が強く、作品の面白みを失っている部分もありました。


また物語の後半、再生医療とクローンという見識から、その倫理感に絡めた物語運びが用意されたものの、どうにも落としどころが安着なイメージを捨てきれないことに加え、ただの学生として認識していた我々読者にとっては唐突に過ぎるSFめいた話の展開についていけなくなることもしばしばあり、物語へののめり込みにくさを助長していました。


もう少し感情面で納得のいくような登場人物たちのバックボーンの補完、言動などを作中に散りばめ、SF展開に移行する前に、それなりの数の伏線を用意し、潜めさせておく準備を怠りさえしなければ、良い作品になったのではないでしょうか。


諸手を挙げて讃美する作品ではありませんでしたが、気になった方は手にとって見ていただければ幸いです。







読了お疲れ様でした。

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○2011/03/24○
主人公爆発しろ!みたいな?……何処とは言わないけど

自分の記憶も体の感覚も変わらないなら何の問題があるだろうか?と思ってしまう私ではこのような話にはなりそうも無い

まあ、続刊も含めて面白い作品だった
[ 編集 ]
○2011/03/24○
私を傷つけて、のシーンですねわかります。

主人公の特性がちょっとだけわかりにくいことと、途中でいきなりSFじみた話にさえ移行しなければ読みやすかったんだけどね。

続刊も面白いというなら買ってみましょうか。

そうそう次回の東方SS、そろそろ投入できそうなんで一応ご報告。今回の文量は前回の三倍くらいかな。
[ 編集 ]
○2011/03/24○
>>今回の文量は前回の三倍くらいかな。

あやや三倍だと!?と読んだ私は……あなた疲れてるのよレベル
[ 編集 ]
○2011/03/24○
あややややや、Xファイルですんね

あややややや登場させてもいいんだけど、あの情報伝達速度と、捏造記者のイメージが強すぎてシリアスだと使いにくくてなぁ。
[ 編集 ]
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