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キーリ 死者たちは荒野に眠る、雑感

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船に乗ろう、キーリ。約束する。




電撃文庫さん刊行、壁井ユカコ著「キーリ 死者たちは荒野に眠る」についての雑感を今回は綴っていきます。


Espliaのあらすじ

教会の寄宿学校に通う「キーリ」は、「亡霊」を親友に持つ霊感の強い少女だった。
そんな彼女は、冬、学校の冬季長期休校の初日に<不死人>(ふしびと)と呼ばれる存在の青年、「ハーヴェイ」と古びたラジオに憑く、「兵長」と呼ばれる亡霊と知り合う。


読み終わった感想は、「終始軸のブレない安定性のある物語だった」といったところでしょうか。


本編における私の考える「軸」とは、本書あとがきにも書かれている「生きることに疲れた男が、生きる意義を取り戻す」というもので、物語の基本的な視覚こそ「キーリ」に因るものでしたが、起承転結を経てもなお、一貫してこの軸がブレていないことが評価に繋がりました


視点が頻繁に変わり、改行後、すぐに別の人物の内面描写が入ってくるなど、やや文法的に納得できない部分も多かったですが、多くの人物の思想や内面描写が入り乱れながらも、文章にならない懸念、超えにならない感情を、個々人、うまく表現している点も素晴らしいと感じます。


特に主人公であり「題名」であり、ヒロインでもあるキーリが、序盤、どこか世間を斜に眺めているような酷薄な印象を与えておきながら、「兵長」を送り届ける旅すがら、徐々に内面の女の子らしい繊細さや我侭さ、愛らしさが頭角をあらわしていく過程は非常に面白かったですね。いつのまに仲良くなったのか兵長を胸元に下げながらの二人にして三人の会話の暖かさは秀逸でした。


普通の少年少女が数奇な旅の果てに普通ではなくなってしまう話というものは山ほど知っていますが、その真逆を突っ走っていながら、こうまで興味深く読み込ませる筆者の技量に感服します。


また、キーリだけでなく、終始面倒臭さを表に出す意固地なハーヴィーの心理的な変容、兵長の一貫した「お父さんっぷり」などなど、全体的に描写が丁寧で面白いのも好感が持てました。キーリの毒舌も個人的には大好物。(マゾというわけではないです)



描写の丁寧さには世界観をまた挙げられ、資源を巡って戦争を起こした結果、資源を枯渇させてしまった後の世界、という退廃に塗れた雰囲気を持ちながら、一種幻想的ですらある「教会」や「宗教」が幅を利かせているという皮肉さも、キーリの毒舌とあわせ、読んでいてにやりと来る演出でした。


加えて本作は、地球とは違う「どこかの惑星」が舞台であるとされ、胸元に揺れる亡霊つきラジオ、心臓に埋め込まれた結晶によってどんな致死のダメージにも復活する<不死人>、その他自縛霊やら、動物霊までもが跋扈(ばっこ)する様相もまた、実にファンタジー色が強いと言え、反作用の旨みを程よく生かしているといえるかもしれません。


ただ皮肉とはいえ、幽霊を目視できない教師は同級生を、子馬鹿にするような言動が随所に見られ、やや思春期にかぶれた傲慢さが鼻につく場面も多くあることが気になるといえば気になりましたね。


勿論、そういった傲慢さも含めての、少女らしさ、といえば納得できる部分ではありますので、「亡霊しか友達になれない」という主人公の器を作るための性格的一要因と目すれば問題はないと思われます。



幽霊が見えるが故、一般社会に馴染めなくなってしまった主人公、という観点から、今作はアニメにもなった『夏目友人帳』との共通点が多く見られたようにも思えました。


後者は、幽霊ではなく「もののけ(妖怪)」が見えるといったもので、またキーリとは違い性別が男であったからこそ、見始めこそ情けない印象が強くなりましたが、本作同様、異端から普通の少年になっていく過程には、子の成長を味わう親のようなカタルシスがありますし、何より一話一話で区切られる小話のそれぞれが素晴らしい出来であったことも含め、私の中での評価はかなり高めになっております。


今作こそ、ハーヴェイの後をついて回るだけの感が強い旅路の描写ですが、次巻以降を一個一個の独立した物語とし、時系列、視点を含めて多種多様なものにしてしまうのも面白いかもしれません


『夏目友人帳』の隠れたテーマに「一般人との付き合い方」、というものがあるように、今後キーリが亡霊だけでなく、キチンと人間の友人を作っていく力が養われていくかどうかにも注目したいところです。


次巻以降への購入意欲が俄然沸き立ちます。




【総評】


亡霊としか仲良くなれない、やや傲慢の物言いが目立つ少女を好ましいと取れるかどうかで作品の良し悪しが変わる作品ではないでしょうか。


旅を通して「普通ではなかった少女」が、「普通の少女」に代わっていく経過を一種寵愛(ちょうあい)の眼差しを持って眺められる人には、その退廃的な文明、そこに蔓延る不相応な亡霊や<不死人>といったファンタジックな雰囲気が絡み合った皮肉な世界観を十二分に味わう事ができると思われます


また年齢的な釣りあいこそ取れませんが、兄貴分の「ハーヴィー」、親父ぜんとした「兵長」、そしてその娘のように可愛がられる「キーリ」の掛け合いの軽妙さと、それぞれ、文章では語られない心情の変化について察せられる丁寧な描写が物語の完成度を底上げしており、飽きることなく読破できました。


幽霊としか仲良く出来ない少女が、一般人への偏見を捨て、どうやって生身の友人一号を手に入れるのか、次巻以降の展開に期待が持てる作品でしたね。


気になった方は是非とも購入を視野に入れ、一考してみてください。オススメです







読了お疲れ様でした。
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○2011/03/15○
>>気になった方は是非とも購入を視野に入れ

毎回言ってる気がするが、あるかどうかは……

主人公女の子ってのが当時すごい違和感を感じた作品で、後半のやめて!私をダシに争わないで!みたいな展開もちょっと趣味に合わなかった。
[ 編集 ]
○2011/03/15○
店頭に並んで無くても本屋で注文できるし、古本屋、ネットの中古本(AMAZONの書籍コーナー含む)でほぼ間違いなく手に入る。手に入れようって気にならない=気にならなかった、ってことだと考えるとそんなに不自然じゃないでしょう

>私をダシに争わないで!

性格悪いけど可愛かったので許容範囲だったりする(え)


にしても計画停電いつまで続くんだろう
[ 編集 ]
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