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9S〈ナインエス〉、雑感

9S-01.jpg




心配するな。この日の感動があれば、大丈夫だ。
世界がこんなにも美しいなら、何を迷う必要がある?




電撃文庫さん刊行、葉山透著『9S〈ナインエス〉』についての雑感を今回は綴っていきます。



Espliaのあらすじ

海上に浮かぶ、単体で全てのエネルギーを賄うことの出来る循環環境施設「スフィアラボ」。
かつて、人体実験などで悪名を挙げながらも、他の追随を許さぬ天才的な頭脳を持つ、狂気の天才、「峰島勇次郎」(みねじまゆうじろう)の残した遺産の一つであった。

とある事情から、そこでアルバイトをする主人公「坂上闘真」(さかがみとうま)は、ある日、武装テロ集団の占拠という事件に遭遇することで、大事件へと巻き込まれていく。


読み終わった感想は、「いろいろな要素が詰め込まれすぎていて、どこか全体的に薄っぺらな印象しか残らなかった」、と言ったところでしょうか。


筆者のあとがきでも触れられているように、この作品は、バトル要素、恋愛要素、SF要素、兄弟愛などなど、いくつもの傾向が見られる作風は、よく言えば実にウィットに富んだものと言えるでしょう


ただ、所謂ロストテクノロジーというSF理論性の強い武装を使ったバトルものは、触れればおしまい一発撃てば必殺、などなどイマイチ戦略性に欠けますし、10年もの間地下に幽閉されていた天才少女が、「手を差し伸べてくれた」という理由だけで主人公を好きになっていく過程などは、読み手の理解が追いつくレベルを逸脱しているようにも思えました。


また、そういったSFの要素がありながらも、古の流派を持つ一族の「血が覚醒」する、といったようなスーパーダッシュ文庫さんの『紅』に似た和風テイストなファンタジー要素が絡んでいることも、和洋折衷とは言い難い塩梅で「妙な苦味」を出してしまっているほか、上に挙げた数多の要素に、文章の大半が使い潰されてしまい、キャラクターのバックボーンがあまり語られず、感情移入がし辛い背景は否定できません


恐らくバックボーンについては、次巻以降に綴られていくのでしょうが、あくまで一巻だけを読んでいてはわかりませんからね。


筆者の有する知識を一つの物語に余すことなく注ぎ込む、その姿勢そのものは大変迎合すべき風潮だとは思えますが、こうも文章にムラが出てしまうと、素直に喜び辛いのが現状ですね。




もう一つ気になったのが、物語の「オチ」でしょうか。


よく、何気ない会話から状況打開の糸口を閃く手法は古典的ですが、真相の観点を変える、という点では、今作も同様、読み物として面白い効果を発揮していると思いました


ただ今作では、舞台である、単体で地球と同じように生活ができる「スフィアラボ」を筆頭に、「峰島勇次郎の遺産」という科学の上も上。未知の事象を魔法と呼ぶなら、まさにマジックアイテムのような性能を持った数多の機材が登場するため、驚きの結末を素直に楽しめませんでした


何かに例えましょうか。


死んだ人が生き返る」、これは我々人類にとってはたしかに凄まじい事象です。
通常、一度死んだ細胞が蘇ることはありませんし、時間が経てば酸素不足による脳死、血液の腐化など、様々な問題をクリアしなければなりません。

しかし、「魔法で」死んだ人が生き返る、という場合は、何がどう凄いのかが具体的にわからず、とりあえず「ああそういうことなの」と納得したような納得できないような微妙な印象しか残りませんよね。


すごい魔法からすごい奇跡が起こっても、我々はあまり驚けないわけです。


まぁ、その裏に、MP消費が激しいだとか、体力を奪われるとか、死の呪が術者に及ぶ、だとかのファクターがあるのかもしれませんが、それを我々が具体的に想像できない以上、そういうものとして納得するほか読み手に方法はありません。


今作の「峰島勇次郎の遺品」はまさにそれにあたり、オチとなる部分が「すごいことは感覚で解かっていても、理屈が追いつかない」ものであり、それゆえ、どう考えても現実的な解釈ではありえない部分への言及になってしまっており、不満が残りました。


SF要素を持った作品に言うべきことではないのかもしれませんが、もう少し現実的な、言い換えれば等身大の理論や動向に主軸を置いたほうが読み手の理解を得られたように感じられてなりません。


無論これはファンタジーの全てを「理解不能」として否定しているわけではなく、やっぱり魔法なら魔法についての架空の理論はそれなりの分量が欲しいですし、読み手の想像力を働かせる手助けとなる表現をもう少し模索して欲しかった、という本音ですかね。


読んでいて面白くない作品だとは思いませんでしたが、どうにも推すべき素晴らしい点が見当たらないボンヤリとした印象を最後まで拭えませんでした。





【総評】

バトル要素に恋愛要素、SF要素などなど、様々なジャンルの知識を惜しみなく投入した結果、動的な(アクション)要素が多分に見られる、アニメ映えのしそうな作品でした

しかし、そういった描写ばかりに文章の大半を使用したことで、登場する多くのキャラクターの心情、内情への言及。それぞれの背負う過去などに焦点があまり定まらず、物語への「のめり込み難さ」を感じました


また、オチに「峰島勇次郎の遺産」という魔法じみた(またはSF的な)要素を主軸として据えたため、全体的に奇抜かつ規模の大きな発想の光る結末ではあったものの、どこか納得しにくい部分が生まれてしまったことが評価を下げるポイントにもなってしまいました。


結果、全体的に特筆すべき良いポイントが見当たらない、という低めの評価に終始する今作ではありましたが、キャラクターのバックボーン、及び内情に、もう少しだけ文章量を肉付けすれば良い印象に転化すると思しき部分が多く見られ、一概につまらないだけの作品とは一線を画すもので、その点は留意していただけるとありがたいです。


もし気になった方がいらっしゃいましたら、それとなく購入を検討してみてください。







読了お疲れ様でした。
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○2011/02/17○
9Sは犠牲になったのだ紅の犠牲にな……

刊行があまりに不定期すぎてイラストレーターが紅の漫画版はじめちゃって十巻超えてイラストレーター交代とか他に知らない
[ 編集 ]
○2011/02/17○
山本ヤマトの「紅」コミックスはなかなか好物。原作で途切れた部分をどう補完するのかな。

10巻になって絵師変更って、編集も思い切ったことするなぁ。もしかして絵柄が似ている人とか、アシスタントとか起用してるのかな、後でちょっと確認しとく。

まぁ2巻買って詰らなかったら、3巻以降は買わないからどうでもいいといえばどうでもいいんだけど(おい)
[ 編集 ]
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