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六百六十円の事情、雑感

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『カツ丼は作れますか?』




メディアワークス文庫さん刊行、入間人間著『六百六十円の事情』についての雑感を今回は綴っていきます。



Espliaのあらすじ


『カツ丼は作れますか?』

地域コミュニティのネット掲示板で書かれたこの一言をきっかけに、HN(ハンドルネーム)「ギアッチョ」「河崎」「ドミノ」「各務原雅明」の四人とその関係者達は、ある人間の起こすちょっとした事件に関わることになる。


入間人間といえば、電撃文庫さん刊行の『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の人気を博す御仁で、そのどこか世界を皮肉った言動に、正直あまり読んでいて心地の良い印象は受けなかったのですが、今作『六百六十円の事情』を一舐めして大分印象が変わりました。



まぁ、一言に「印象」、とはいっても、やっぱり世間や社会に対して斜に構えた文脈は、鉱脈で鉱石が取れてしまうほど意外性もなく見当たりますし、なぜか無職の人間にばかりスポットが当っていたり、家出だったり、万引きだったり、どこか暗い話題が目立つ雰囲気は相変わらずです



これだけ読むと、「何も変わってないだろ」といわれそうですが、少々お待ちを。


今回私が触れたいのは、あくまで「作風」ではなく、文章中には表記されない人間の描き方にあります。


例えば、本編で活躍するHN「ギアッチョ」さんは、無職でありながら、ギターを6年間弾き続けた功績が最終的には称えられていますし、一見して根暗そうな万引き高校生「河崎」さんも、一目惚れした「北本」さんと、なかなかうまく付き合っています。


何が言いたいか、と言うと。
今作が、相変わらず世間や社会をこっぴどく皮肉っている内容のわりに、こと人物像を描くとなると、その「現実味」がかなり大味に表現されている、ということが言いたいわけですね。



我々の日常に蔓延る悪意にやたらと敏感で、それに棘の効いた拳をずしずし打ち込むことを好む筆者にしても、やはり恋愛に対する甘い幻想を失っているわけではないし、昨今の若者ならば鼻で笑ってしまうような「夢」や「希望」という意味をそれほど嫌っていない、どこか若々しい香気が、意外にも今作には溢れているように感じました。


上に挙げた例に則っていえば、無職で、おまけに上手くも無いギターを弾き続けた「ギアッチョ」さんが世間から見向きもされなかったり、「河崎」さんが「北本」さんに、きもいの一言であっさり見限られたりする可能性の方が、幾分「現実」としてみたら妥当な線なわけです。


つまり、彼の作品には、厭世的な内容や皮肉に満ち溢れたリアリティをウリにしたような作風であるのに対し、人物の性格や言動、物語の発展の仕方が実に「ファンタジー」に溢れているわけですね。


リアリティとファンタジー、相反しながらも、決して矛盾しないであろう、その調律を白刃の上を渡るバランスで両立させた事は、今作で大きな評価点となりました



少々、文字に起こすには難解な話になりすぎましたので、この話題はここらで終えましょう。




シナリオに関しては、掲示板に興味をしめした四人の人間と、それに関わるいろいろな人との人間ドラマが主要となります。


ただ、どの話も、上記に記したような人物(無職だったり、万引き常習者だったり)が多いことから、「暗中模索の日々からの脱却」をテーマにした話が多く、冒頭の語り口が、現状への不満だったり、恐怖だったり、家族への愚痴だったりと、どうにも負の側面についての言及が多く、やや「ウジウジ」した物言いが目立ち、好き嫌いが別れそうですね。


また、あらすじでは、「ある事件に4人と、その関係者が関わる」というようなことを書きましたが、映画であるような、ひょんなことから壮大な事件に巻き込まれていく~云々というような大事ではなく、まさに「小事」というべきもので、壮大さに関して期待をすることは万が一にもオススメはしません



ただ、『カツ丼作れますか?』という言葉をきっかけに、各章でそれぞれを悩みに立ち向かっていった「主人公達」が一堂に会す場面は、特筆すべき盛り上がりこそありませんが、胸に染み入るような感慨が浮かびますし、先述した「人物像の描き方」がうまいおかげで、まるで手塩に掛けて育てた子供が巣立っていくような、一種満足感を与える構成は実に上手いと思いました。「派手さ」はなんてものはこの物語にはやっぱりそぐわない


プロローグを1、2と分けて書き、エロゲーの第一OP、第二OPのような(どんな例えだ)箔を付ける演出も、はっきりとした転換点としての役割を果たしていてなかなか好印象でした。



気になった点は、上記に記した四人が関わる「小事」が、ややあっさりと書かれすぎている、ということでしょうか。


その中でも特に「小学生が家出」、というのは文章として見た場合それほど特筆すべきものではないでしょうが、親から見れば、それは子供の生死に関わる大事で、「数日で帰ってくる」、という彼女の手紙があったとしても今回のように、やや緊張感に欠けた母親の言動はそれなりに違和感をそそられます。(親子二代に渡っての口調はこの際目を瞑りましょう)


娘のため、やたらヒステリックな人になってしまうと、話がどうしても深刻化してしまうので、あえてのあの言動なのでしょうが、もう少し「誘拐」のような負のキーワードとの化学反応をしても良かったのでは、とは思いました。


ただ、不自然ではあっても、今作の結末には後腐れの無い展開がよく合いますし、この点に関しては、あまり強く批判は出来ないのが実情で、あくまで気になったポイントとして留意してもらえれば良いかと思われます。


あとは、登場人物の一人であるはずの「中家ソウがあまり活躍しないことがちょっと気になりますね。まぁ、本当にちょっとですけど。




【総評】


作風は、世間を皮肉った内容、人間、家庭の暗部や心持への言及が多く、やや愚痴めいた内情が目に付きますが、登場人物の描写に適量の「ファンタジー」を混ぜ込むことで、釣りあいを取り、上手い具合にバランスを取った良作でした


語り口こそ悲壮感に満ちたものが多く、人を選びますが。各章に渡り、それぞれの「主人公」が見つける「希望」や「夢」が結末をしっかりと照らし出してくれるので、読了感はかなり良い余韻に浸れるでしょう


また特徴的な言葉遊びが多く、一部ダラダラとした印象を受ける場面もありますが、登場する人々は腹に一物ありながらも、黒さはなく、ドロドロとした人間関係や騙しあいなどとは全くの無縁であることも評価のポイントだと思われます


場面描写が少ないかわりに、人物の内面についての言及がかなり緻密に綴られていることで、ヒューマンストーリーとしての厚みも抜群ですしね。


感動! 号泣!


といった要素からは離れた作品ながらも、読み終わった後に静かな興奮と余韻に浸れるとても味わい深い作品ですので、気になった方は是非購入してみてください。

オススメです。





読了お疲れ様でした。




追記
Q、『カツ丼作れますか?』
A、『から揚げ丼ならなんとか』


追記2
「ドミノ」さんのおしゃまな、ですます口調、大きなリュックサック、つれない言動。
・・・・・・某「マイマイ」を思い出してしまうのはきっと化学反応なんでしょうなぁ。
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○2011/01/31○
みーまーを二巻まで読んで拒絶反応が起こり、以後この作者というだけで読む気がしない私はトンカツよりも唐揚げ派

[ 編集 ]
○2011/01/31○
入間人間はかなーり好き嫌いが出るよねぇ。

個人的にはあの独特なセリフ回しが好きだったりするんだけど、やっぱり全体的に斜に構えた文章が鼻につく模様。

トンカツよりも、から揚げ派な貴方にはもれなく私からの友愛出前が届くのだろう。嘘だけど。(なんつって)

まぁ面白いから、ちょっと安かったら買ってみてちょうだいな。
[ 編集 ]
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