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アリソン【第一巻】、雑感

arison-01.jpg





ああ――。 いい眺めだ。




電撃文庫さん刊行、時雨沢恵一著『アリソン』についての雑感を今回は綴っていきます。


Espliaのあらすじ

大きな河と山脈により分かたれた二つの連合国、「ロクシェ」、「スー・ベー・イル」。
果て無き闘争の歴史の中、わずかに訪れた平穏の時代。

ロクシェに存在する、「ロウ・スネイアム記念上級学校」の生徒である「ヴィル(ヴィルヘルム)」は、ロクシェ空軍の軍人である少女「アリソン」の訪問をきっかけに、ホラ吹きで有名な老人の言う、「戦争を終わらせられるほどの宝」を探すことになったのだが・・・。


少しマニアックな戦闘機ウンチク、生死を掛けたドラマに戦闘、笑い、恋愛要素も少々。
と、言った具合に、今作『アリソン』は一言では言い表せない多くの見所を抱えた魅力的な作品でした。


最近では、川上稔著『境界線上のホライゾン』などの作品もあるように、ライトノベル、と一言で括っても、なかなか煩雑な設定や伏線が散らばせられていて、とっつきにくい印象のものも少なくありません。
しかし、その点今作は、まさに「軽い読み物」としての「ライトノベル」の意味を忠実に踏襲し、誰でも抵抗感なく読める体裁を装っています


上記のあらすじだけを見てしまうと、専門用語が多いことから複雑な印象を持ってしまうかもしれませんが、結局のところ「一つの大陸にある二つの国が長く争っている」、ということだけを覚えれば問題ありません。


敷居はかなり低い目と考えてもらって間違いないでしょう。



あまり「この筆者だから~云々」と言ったような、やや偏見に近い完成で作品を見ることは控えていましたが、今作においては、まさに時雨沢恵一氏特有の面白みが強く香ってきたように思います。


戦闘機の知識、食事の描写、人物描写、どれをとっても非常に表現の幅が広く、語彙の豊富さが目立ちます。


何よりすごいのは、その豊富な語彙を見せびらかすための「意図的に難しくした文章」にしないよう、理解に及ばない造語を使わず、難しい漢字を使わず、我々が読んで普通に理解できる範疇を決して逸脱していない点が挙げられるでしょう


ライトノベルにのみ言えることではありませんが、上記に挙げた『境界線上のホライゾン』、ノベルゲームで言えば『いつか、届く、あの空に。』や『最果てのイマ』など、ある程度の予備知識(※)がないと本筋を理解するのにもそれなりの時間が掛かる物が少なからず横行しています

  ※何が一般知識か、という点は多々解釈があるものなので、言及は避けます。

難しいものが一概に悪い、というわけではありませんが。誰でも違和感無く読める作品にこそ高評価をつけたくなります



キャラクター描写において、おしゃま、というより傍若無人な性格のアリソン、それに家来よろしく付き従いながらも、決して卑屈ではないヴィル、女ったらしの気障(きざ)軍人でありながら根は実直な「ベネディクト」など、表向きの言動と、内に秘めた思いのギャップのあるキャラクターが多く、「厚み」が感じられるのは注目すべきポイントですね。


ヴィル、アリソン側の敵として登場し、ビジュアルも一見強持てのベネディクトが「この・・・。くそう・・・。」などとぼやきながら、必死に河川を下っていくシーンは個人的に気に入っています。


何より主人公側のヴィル、アリソンの掘り下げがキチンとなされている上、ベタベタとくっついている訳ではないのに、互いが互いをどれだけ大事にしているか、が非常に上手く描かれていて、彼らの一喜一憂を含め、物語を一層面白いものに昇華している点は見過ごせませんね。


全編通し、キャラクターの色彩がはっきりと出た軽妙な会話、またそれに派生した言外の感情表現の丁寧さも光ります。


常々私ののたまう、「ヒューマンストーリーとしての厚み」というものが今作にはたっぷり詰まっていると言えるでしょう。


どこをとっても完成度の高さが伺える出来栄えに終始しています





ただ、唯一、苦言を呈するポイントがあるとすれば、物語の結末でしょうか。


ヴィル、アリソンが本編を通じて探す、曰く、「戦争を終わらせられる宝」という謳い文句にケチをつけることはしませんが、やはり「宝」そのもののインパクトは、読み手にとってそれほど大きいものではなかったと思われます


両国のシンボルについてきっちり言及している点や、本編を通してさりげなく解釈が載せられていたりすることなど「伏線」も「目の付け所」も「考え方」も実に明解です
読み手に筆者の考えを十二分に伝えきれたと言っても的外れではないでしょう。


ただ、問題はそういった伏線を仕掛ける土台。もって言えば、タネの下地。これがやや「あさっての方向」を向いてしまっている印象がありますね。


どちらが先に生まれたのか。


という論旨は理解できますし、少なからず両国に歪を与える要素であることも疑いません。
しかしそれが、あたかも「戦争のきっかけ」という扱いにされると、どうにもピンときません


非常に稚拙な発想で申し訳もありませんが、それが例えば「両国それぞれの主宗教のシンボル」というぐらいに決定的なものであったならば、「宝」に関する読み手の印象がもう少し現実よりになったのではないかと考えてしまいます。


しかし、この点に関しては、アリソンが「想像していたのと違う(概要)」などと本編でほのめかしているように、見つけた「宝」が「受け手によっては印象が薄くなる」、という前提が、やはりに筆者あったと推察されます


あえて、そういった「宝」を用意した理由については憶測も推測もし難いものではありますが、なんらかの意味があるのだと見て間違いないと思われます。


勿論、単に「万人が納得できる宝など存在しない」ということなのかもしれませんが。





【総評】


厚みのあるキャクラクターが活躍する、笑いあり、涙あり、戦闘あり、愛ありの冒険活劇の傑作です。


豊富な語彙と表現の幅を持ち、数多くの著書を手がけながら、理解し難い内容を読み手に一方的に押し付けるのではなく、万人に理解を得られる、筆者の丁寧な執筆姿勢に頭が下ります。


上記に記したように、結末こそやや衝撃からは遠い内容ではありますが、「宝」に到るまでのヴィル、アリソンの行動、マクミランという人物への言及、どれをとっても非常に丁寧な物語の練りこみに好感が持てます


表紙や挿絵の関係から、一般の方にもオススメとまではさすがに言えませんが、内容はまさに「健全」で「健康的」です。


一概に「性欲」、と断じてしまうのも甚だ不遜ですが、そういった関連から「ハーレム要素」、「お色気要素」が無いとライトノベルを楽しめないという人であっても、その認識を塗り替えられるほどに地盤のしっかり作品ですので、気になった方は是非是非、読んでみていただければ幸いです。


オススメです。




読了お疲れ様でした。




追記

更新がかなり遅れてしまいました。申し訳ありません。
ここ数週間は事情により更新が遅くなることがあると思います。
ただ勿論、一週間に一記事をやめるものではありませんので、以降もよろしければお付き合いください。
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○2011/01/22○
「アリソン」、「リリアとトレイズ」、「メグとセロン」と続いてるシリーズの筈。
面白い作品だというのは同意だけど「アリソン」が出たのが六~七年前ぐらいで、古本屋にあるかどうかじゃないかなあ

ラノベの絶版は早いよな~

[ 編集 ]
○2011/01/22○
調べてみたら『アリソン』初版は2002年の3月。
今が2011年の1月だから、約9年前の本ということに・・・。

ブログ名通り、雑感記事は「時代遅れ」な本のチョイスが主だったけど、今回はちょっと古すぎたかぁ・・・。

近くの古本屋に50円で平積みされてて、正直どこにでも売っていると錯覚してた。
[ 編集 ]
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