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カレとカノジョと召喚魔法【第一巻】、雑感

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記憶がなくなってもね、心には色んなものが残るんだよ。
思い出が全部なくなっても、心はそのとき感じたことを忘れない。



電撃文庫さん刊行、上月司著、『カレとカノジョと召喚魔法』について、今回は書いていきます。

Espliaのあらすじ

小学生の頃、事故で右足の機能を失った「白銀雪子(しろがねゆきこ)」のため、悪魔「リールゥ」を召喚した「水瀬遊矢(みなせゆうや)」は、彼女の治癒の代償に、一つの条件を付け加えた上で『恐怖』『緊張』という感情を渡してしまう。
自分のせいで奪われた遊矢の感情を奪い返すため、雪子はリールゥの提示した一つの条件、「かくれんぼ」に身を投じる決意をする。


まず読んでいて気になったのが、文章の構造。
例えば、P259の、

初めから○○(人物名)が怪しいなんて言われていたら過剰に注意しちゃってボロは出さなかっただろうから


という文章があります。発言者は『雪子』です。

これを最初に見たときは、「ボロを出さないなら問題ないじゃないか?」と意味がよくわからなかったのですが、あとあと、これが「過剰に注意しちゃって」という対象が雪子、「ボロを出さなかった」という対象が○○だと気付いたことで理解が得られました。

このように、本書では会話文に「5w1h」の「who(誰が)」が致命的なまでに省かれているという傾向がありました。これは素直に読みにくかったといえるでしょう。

特に先述した文章は、

私が)過剰に注意しちゃって(、警戒した○○が)ボロを出さなかっただろうからね


このように多少文字を増やしても、「誰が」を入れることで読み手の理解は数段早く及ぶ形に変えられます。

もちろん私の読解力の無さ、というは常に付きまとう現実ではありますが、他の著書を読んでいて、ここまで「通行止め」を食らう文章は久しぶりで印象に残りましたし、少なくとも句読点くらいは打つべきではないでしょうか。不親切さが垣間見えます。

読み手がせっかく物語に入り込み、次々と文章を読み進めていくにあたって、中途で出てくるこれら難解な文章は毒にはなっても、薬にはなりえません。


他にも主人公達の通う校舎の内部構造を延々長く書いたり、謎を明かす行程をやけにじれったく伸ばした上で、その合間に関係の無いキャラの心情を挟んで長々と綴ってみたり、説明の例がわかりにくかったり、今回の事件を起こした犯人の思想がとても脳内補完できるレベルを逸脱していたり、・・・なかなか残念な部分が目に付いた印象が拭えません。

また、推理段階で、裏口の位置から正面門は隣接していないとか、保健室がどこにあるか、などの立地条件を用いて解法を導くのは良いのですが、はっきりいって解かり難いです。
そもそも大きな学園という前提が、小さな学校にしか通ったことのない私にとっては、全容を理解するなんてことは元より、どんなものかを想像すらことすら出来ませんでした。

なので、裏口がどうとか、保健室がどうとか、推理に地形を絡めるならば、綾辻行人著、通称「館シリーズ」新装改訂版に附随しているような『図解』及び『マップ』のようなものがあれば、一層理解がしやすくなったのではないでしょうか。

「絵」と「文章」。その集合体である「ライトノベル」という地盤を筆者がうまく生かしきれていないと指摘できるでしょう。雪子たちが警備ルートを決める際に出せば違和感もなかったですし。

断言、とまでは行きませんが、恐らく本書は、筆者自身の中では「当り前」のことであっても読者はそれを理解していない、という前提を忘却しているように思えました。


他にも・・・・・・、あー、追い討ちのようで恐々としますが、序盤の雪子の一人で考えて、一人で葛藤して、一人で完結してしまう、言わば「独り相撲」状態の行動。
「~だった」「~思っていた」が連続するような動きのない、さながら殻に閉じこもった亀を愛でているような平坦な文章。
説明口調が延々と続く学校案内パンフレットを読んでいるかのような躍動感の無さなど、読んでいて溜め息を付かされる場面が多くあったのが事実です。


一方で、誉めるところもそれなりにあります。
例えば、雪子の右足を直す代償に「恐怖」と「緊張」という感情を悪魔に奪われた遊矢、というくだりは、今後の展開に期待の出来うる、非常に面白い出足だと思いました。

キャラクターの扱いにしても、雪子こそ読み始めからの印象どおりでしたが、他の女性キャラにデレデレしていたり、幼馴染の雪子相手に容赦ない客観的な意見を言ったりしていて、どうにも好きになれなかった遊矢を中盤から最後に掛け、格好よく仕上げている点は読んでいて久々に胸が躍りました。本書で最大の見所といえるでしょう。


一方で、過去の吸血鬼退治をあっさりとした思い出でしてしか説明がないことを筆頭に、物語がほぼ雪子の視点でのみ語られるため、どうしてこんなに無茶をするのか、相手をどう思っているのか、というような登場人物に対する親近感や理解を深める描写が少なかったのはやや残念でしたが


【総評】

出足の奇抜さと、物語の設定は非常に興味深いものを感じました。登場するキャラクターも一部を覗いて非常に万人向けなブレのない個性を有しているのも良いポイントです。
特に主人公の一人である遊矢を好きになれれば、本書の面白さは格段にあがると思われます。


留意すべきは、今回登場する事件の主犯の思想が、常人の理解が及ばぬほどに突飛で、「これで納得しろ」というのが酷なレベルに終始していたり、さっき散々書き散らしたように、読み手を躓かせる「小石」が本文のいたる所に配置されていたりする点が挙げられます。

これらははっきり言って、本書を最後まで読みきるだけのモチベーションをぐんぐん引き下げていくだけの効果しかなく、ほとんどの人が面白い作品を読んで感じる「一気に読んでしまう」という爽快な感覚とは180度違う感想を抱く人が多いと思います。

単純な推理ものとして楽しむにも至らず、キャラクターの掛け合いだけを楽しむにも至らず、どこか満足感のない残念な作品、というのが率直な感想です。



読了お疲れ様でした。


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