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漫画感想『惡の華』




今回紹介する作品は、少年マガジンKC刊行、押見修三著『惡の華』です。


【簡単なあらすじ】

ボードレール『悪の華』を愛する少年――「春日高男」は、ある日クラスのマドンナ的存在である「佐伯奈々子」の体操服を盗んでしまう。
己の突発的な行動に罪の意識を覚えた「高男」は、後日盗んだ体操服を隠滅しようと画策するのだが・・・・・・。

一部始終を見ていたクラスの嫌われ者「仲村佐和」から発せられた脅迫まがいの「命令」。それを嫌々ながらも受け入れてしまったことにより、彼の世界は音を立てて崩れていく。


【Good point】

突発的に体操服を盗んでしまうという思春期によく聞く逸話を昇華させた題材ながら、笑い話では済まされない、世間の『常識』を前面に押し出すことより、「取り返しのつかない罪」としての認識をしっかりと読者にも植え付ける描写力に脱帽です。

社会に出れば「殴り合い」は訴訟モノ、ただの「悪戯」も悪質ならば通報モノ。

学校という特殊な世界でこそなりたつ「罪」の形。許されない「罪」の線引きがあり、中学生という思春期真っ只中にある不安定な気質が合致することによって生まれる奇怪な価値観の応酬が、いい意味で客観性を廃させています。

自分の住む町、通う学校こそが世界の全てである彼らにとって、同級生や親に「見限られる」という恐怖が、いかに凄まじいものであるかは恐らく誰もが味わうものでしょう。

一見して狂った描写の多い作品ですが、発展ではなく根本にこういった共感性を感じられることが人気の一因かもしれませんね。


基本的な物語の運びは、1巻表紙の「クソムシ」が印象的な「仲村佐和」が主人公「高男」を体操服の件で強請り、人間性をとことんまで侮辱する、という展開がメインと成りますが、「佐和」が侮辱する際に発する「クソど変態人間」やら「うんち人間」やら、その怜悧な容貌のわりに幼稚な暴言が、義務教育というものを悉く拒否してきた彼女の過去を匂わせ、「奇抜な展開」にのみ目を奪われながらも、こういった人間性を言外に表現する演出の卓抜さも、見所の一つとなっています。

巻数を経るごとにすっかり上下関係が決まりきってしまった二人ではありますが、この知識量の違い、世渡りの得手不得手がどういった影を今後どう落としていくか、非常に興味が沸きますね。


徐々に「謎の女」ではいられなくなってきた「佐和」の背景。「高男」をただ侮辱するというよりは、性的な因子に固執する意味。いよいよ本性を現し始めた「佐伯奈々子」の参戦を含め、物語がどう転がっていくのかわからないからこそ、筆舌に尽くし難い魅力があるのかもしれません。


【Bad point】

主人公が真性のヘタレかつ優柔不断。
体操服を盗んだはいいが、罪悪感塗れで変態にもなりきれず、同い年の女に小突き回される軟弱さに、「主人公=読み手」という感性をもって望むと大火傷をします。

また中学生とはいえ、誰かに相談するという考えにさえ至らない未熟さが際立って描写がなされること。どこか大人や社会の枠組みを馬鹿にした作風であることから、読み手自身の考えや、一般常識と照らし合わせると少なからず癪に障るシーンがあります。

友人関係は必ずといっていいほど「薄っぺらさ」が強調して描かれますし、現時点では素晴らしい人間ドラマもありません。
やたら「性」を意識させるキャラクターの行動も多く、開けっぴろげな物言いはお世辞にも上品とはいえないもので、不快感を感じる人も多いでしょう。

あくまで本作は前例にないくらい「異端」な作風であることをウリにしているのだ、としっかり認識した上で読むべきものであって、漫画の注目度ランキングに載っていたからという理由だけで買うべきでは作品でないことを念頭におかれると良いでしょう。

一部絵が崩れている点。「佐和」の命令が巻数を経るごとに新鮮さを失い、当初の奇抜ささえ失いかけていることにも留意が必要かもしれません。


【個人的な戯言】

何より最初のインパクトが凄いです。

俯瞰して見れば、一見してキ〇ガイ人間の集まりかとしか思えませんが、どのキャラクターも(恐らく)一定の法則に従って動いている節が随所に見られ、「佐和」を筆頭とした言動の裏側を考える楽しみが昨今ではモチベーションの向上になっています。焼け跡から拾われた計画書ははたしてどう今後に繋がっていくのか・・・・・・。

ただ4巻あたりからは、主人公二人組みの突飛な行動に慣れてきてしまって、急展開に耐性ができてしまったのが痛く。
筆者もそれがわかっているのか、あくまで最初は常識人として描かれてきた「奈々子」を病ませてみたり、主人公がただ蹴られて喜ぶだけのマゾになっていたり、成人向けの作品に近くなった分日を追うごとに新鮮さが失われている感覚があります。

残された秘密というのも、考えれば「佐和」の過去ぐらいしか残っていませんし、このまま長く続けるよりは、次巻あたりで一気にエンディングを迎えるぐらいでちょうどいいのかもしれません。







気になった方は上記に留意しつつ、購入を検討していただければ幸いです。














読了お疲れ様でした。

(過激な絵が多いので、今回は画像少な目です。時間がなかったとかそんなんじゃないです、・・・・・・よ?)
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